日本オラクルは4月25日、都内で記者会見を開き、AI(人工知能)ベースの新機能やユーザーエクスペリエンスをHRMS(人事管理システム)ソリューション「Oracle Human Capital Management Cloud(HCM)」に追加したと発表した。
同ソリューションについて、日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 HCMソリューション部 部長の都留崎厚徳氏は「採用から配置・処遇、育成することで、戦略目標の達成と持続的成長を実現し、かつ現状認識・将来予測を行い、プロセスや制度の見直すなど企業における人のマネジメントメントサイクルを支援している」と、説明した。
同ソリューションには、AI「Adaptive Intelligent Apps」を組み込んでおり、個々の業務に対して、マッチした従業員の採用や、どこの部署へ最適に配置していくかなど、プロアクティブな情報を提供する。つまり、個別の業務にAIを適用し、全体の効率性と有効性を高め、ひいては業績に対しプラスに作用させることができるという。
また、包括的な人事業務プロセスをサポートし、業務プロセスの各所にAdaptive Intelligent Appsを最初から組み込んでいるため、ユーザー側でAIの設計を不要としている。
さらに、特定の業務目的に特化したAIとして開発しており、Oracle HCM Cloudに加え、そのほかのアプリケーションにも組み込まれている。また、サードパーティデータの活用やビジネスに直結したアウトプットを可能としている。
同氏は、AI戦略の実現に関して「最も重要な要素はデータだ。しかし、人事データは、例えば紙やWordファイル、エクセル、人事データベースなど会社内でバラバラに管理されている。だからこそ学習データが大事なものとなる」と指摘。
そして「過去のデータに基づき採用予定の人材がマッチングするのか検証を行うのが機械学習であり、そのためアプリにAIを組み込んでいる。また、アプリを使い、蓄積された自社のファーストパーティデータと、自社以外の匿名化されたサードパーティデータを組み合わせてAIを活用することもできる」と、強調する。
具体的には、企業の採用ページを訪問した際に求人情報や採用プロセスについての疑問をチャットボットがリアルタイムで対応するほか、求人に適切と想定される候補者を社内外を問わずAIが提案。
また、匿名化されたサードパーティデータの活用により、採用ページの来訪者が何に興味を持つかを認識し、動的にコンテンツを推奨するという。今後、同社では6カ月以内にこれらの機能をリリースする予定だ。
なお、現状でAIが適用されている業務は計画領域の「スキルギャップと離職リスクの予測」、能力開発とリテンション領域の「将来のパフォーマンス・退職リスクの予測」「従業員に最適な職種やメンターの推奨」「キャリアパスと現状のスキルレベルを加味して最適な研修の推奨」の4つとなる。
「体験型組織」の重要性とは
日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部長の原智宏氏は、3月下旬に米国のダラスで開催したOracle HCM Worldで基調講演について触れ「講演者のJacob Morgan氏によれば、生産性を向上している企業は『The Experiential Organization:体験型組織』だと説明していた。従業員が組織に所属する中で、どのような体験が得られるのかということを重視・実行している企業が重要な人材を獲得していくだろうとも述べていた」と話した。
これは、従業員エクスペリエンス(体験)に投資している企業は、従業員の生産性が高いということを示しているという。では、従業員エクスペリエンスとは何か、この点について同氏は「『カルチャー』『テクノロジー』『フィジカルスペース』の3つの要素で構成されている」と説明する。
カルチャーは企業の文化・組織風土、テクノロジーは業務を遂行する上で利活用の可否、フィジカルスペースは働く場所、オフィスなどの環境となる。各要素が従業員エクスペリエンスに影響を及ぼす比率は、カルチャーが4、テクノロジーが3、フィジカルスペースが3だという。
その中でも同社は、カルチャーとテクノロジーにフォーカスしており、体験型組織の概念はは日本企業にも当てはめることができるとしている。
原氏は「日本企業は、終身雇用を中心としたメンバーシップ型組織(1つの大きな家族)であり、企業文化や従業員の環境の提供をはじめカルチャーに対しては投資しているが、テクノロジーの部分については従業員のエンゲージメント高めるために、取り組む余地がある」との認識を示していた。
2018年のHRテックのテクノロジートレンドはAI、インテリジェントなアプリケーションとアナリティクス、対話型プラットフォーム(チャットボットなど)の3つが想定されている。
同社では製品開発テーマとして「より便利に」「もっと賢く」「社員にさらなるサポートを」の3点を掲げており、これらのトレンドに対しアプリケーションの提供により従業員のエンゲージメント高めることをサポートしていく考えだ。