空を駆ける世界大会「レッドブル・エアレース」の2018年シーズン第2戦は4月22日、フランスのカンヌで開催された。室屋義秀選手は決勝のファイナル4へ進出するも4位となり、年間ポイントでは3位で次の千葉戦を迎えることになった。
待望のダブル機体改造、いよいよカンヌでデビュー
2017年、年間チャンピオンに輝いた室屋選手の機体はその酷使で満身創痍。シーズン終了後、修理に集中したことで初戦のアブダビ戦はほぼ昨年と同仕様の機体で出場したものの、2位と好スタートを切ることができた。しかし「我々はチャレンジングなチーム」と語る室屋選手は、カンヌ戦までに機体改造の準備を進めると予告してもいた。
予告していた改造は、エンジンのカウル。つまりカバーだが、空冷式エンジンにとってカバーとは冷却装置そのものであり、エンジンを効率的に冷却しつつ空気抵抗を減らす非常に重要な部品だ。1月の記者会見では不鮮明に加工された写真が公開されていたが、ついにヴェールを脱いだ。
もうひとつ、主翼の先端部分が交換された。室屋機はこれまで先端を後方へカーブさせた「レイクドウィングチップ」を装着していたが、これを上へしならせた「ウィングレット」に交換したのだ。この開発には数年を要しており、待望のデビューだ。
徐々に調子を上げ、ファイナル4進出
新しくなった愛機で初の大会に臨んだ室屋選手。20日の練習には従来の「レイクドウィングチップ」で出場したが、21日の練習と予選では「ウィングレット」に交換した。その不慣れもあってか、練習での最高2位から予選では6位と順位を落としたものの、タイムはトップと0.38秒差で、まずまずの調子を見せた。
そして22日の本戦、14選手が7組に分かれて一騎討ちする「ラウンド・オブ14」で室屋選手はピート・マクロード選手(カナダ)と対戦。先攻のマクロード選手は58.212秒、続く室屋選手は58.015秒と両者ともに好タイムを記録し、わずか0.197秒差で室屋選手が勝利。マクロード選手も7人の敗者のうち最も速い「ファステスト・ルーザー」として8人目の勝ち残り選手になるという、ハイレベルな戦いでスタートを切った。
続く「ラウンド・オブ8」では地元フランスのミカ・ブラジョー選手と対決。室屋選手はまったくふらつきのないパーフェクトなフライトを見せ、この日の全フライト中最速記録の57.364秒でブラジョー選手を下した。また室屋選手とは同期の親友である、マット・ホール選手(オーストラリア)、マティアス・ドルダラー選手(ドイツ)も揃ってラウンド・オブ8を突破。決勝の「ファイナル4」への進出を決めた。
ところが4人目の勝者をめぐって波乱が起きた。初戦アブダビ戦で優勝のマイケル・グーリアン選手(アメリカ)と、昨年の年間2位のマルティン・ソンカ選手(チェコ)というトップクラス対決を制したのはソンカ選手。ところがソンカ選手はエンジン回転数が規定違反とされ、失格になってしまったのだ。実は前回のアブダビ戦でもソンカ選手はエンジンの規定違反で順位を下げられており、不運と言うしかない。
痛恨のペナルティ! 室屋選手、表彰台ならず
そして、決勝のファイナル4。1番目のホール選手は57.692秒で、この日の自己最高記録をマークした。続く2番目の室屋選手はラップタイムではホール選手を上回っていたが、「インコレクト・レベル」(機体を水平にせずにゲートを通過)で2秒のペナルティを受けてしまった。競技後、室屋選手は「かなり強い横風を受けた。インコレクトレベルを取られてしまったが、パイロンヒットは避けることができたので良かった」と説明した。
続くドルダラー選手は57.764秒で2位、グーリアン選手は58.083秒で3位。室屋選手はペナルティを加えて1:00.261秒となり、4位で表彰台を逃した。ホール選手は2016年9月以来2年弱ぶりの優勝だ。
地元日本で3年連続優勝なるか、次の舞台は千葉
この結果、3位のグーリアン選手は年間ポイント24点で、アブダビ以来の1位を守った。続いて、アブダビでは5位ながらカンヌで優勝したホール選手は年間ポイント21点で2位に浮上。室屋選手はアブダビの2位から、年間ポイントでは19点で3位へ、ひとつ順位を下げた。
強風で優勝こそ逃したものの、室屋選手のラウンド・オブ8での記録は決勝日の全選手中最速で、ポテンシャルの高さを証明している。
トップと5点差の年間ポイント3位で迎えるのは、5月26日・27日に開催される第3戦千葉大会だ。2016年と2017年に続く3年連続地元優勝の快挙を成し遂げ、年間優勝へ大きく踏み出すことができるだろうか。