台湾TrendForceの半導体メモリ市場調査部門であるDRAMeXchangeは、半導体事業とりわけ国内メモリ産業育成に焦点を当てている中国におけるキープレイヤー3社(YMTC=NAND、Innotron(Hefei Chang Xin)=モバイルDRAM、JHICC=特殊用途向けDRAM)が、いずれも2018年の下期から試験生産を開始し、2019年より量産に移行する予定であるとの見通しを明らかにした。2019年が中国国内企業によるメモリ製造の初年度となる可能性が高まってきたといえる。
Innotronは、2017年6月に工場建設を終え、同年第3四半期に設備の設置を終えているが、現在までに試験生産を2018年第3四半期に延期することを明らかにしており、当初の計画よりも遅れが生じている。また、Innotronは、最初の製品としてLPDDR4の8Gビットチップを計画しているが、これは先行している大手メモリメーカーの有する特許を侵害している可能性が高いという。そのため同社は、国際法によって認められた知的財産権の取得などを進める必要がある可能性があるともしている。
一方のJHICCは2016年7月、福建省晋江市に12インチ(300mm)ウェハ工場を建設する目的で53億ドルを投資する計画を発表していたが、こちらも生産予定品である特殊用途DRAMの試作を2018年第3四半期まで延期し、量産も2019年へと延期することを決定している。
そしてYMTCだが、2016年12月末にNANDの生産拠点を起工したのを皮切りに、3つの3D-NAND工場を段階的に建設していく長期計画を立てている。第1期工場の建設は2017年9月に完了し、製造設備の設置は2018年第3四半期に開始する予定で、試験生産は同年第4四半期から開始される予定だという。また、同工場では当初、32層のMLC 3D-NANDを1か月あたり1万枚程度で生産を行う見込みで、その後、64層品の設計を終えた段階で、第2工場ならびに第3工場の建設と生産計画を具体化させていくものとDRAMeXchageは見ている。
ここまで先延ばしが続いてきたDRAMの生産だが、長期間、工場を稼動させないというわけにもいかないといった事情などから、2019年には中国のメモリ企業として正式にDRAMの生産が立ち上がるものと同社では見ている。ただし、実際に市場に影響を与えるだけの量を生産するには、それなりの時間が必要となるため、JHICCとInnotronが生産を開始したといっても、すぐに市場シェアを獲得して、といったことはないともしている。また、DRAMにしろNANDにしろ、こうした中国メーカーは、既存のDRAMメーカーと比較してより多くの課題を乗り越える必要が生じる可能性があることから、生産の進捗は現在の計画よりもさらに遅くなる可能性もあるとしている。
それでも長期的に見た場合、中国のDRAMメーカーは、習熟曲線に乗って、2020年もしくは2021年には生産能力一杯まで稼働率を上げることができるようになるとも見ており、JHICCとInnotronの合計生産能力は、2020〜2021年ころには月産25万枚に達すると予測しており、これだけの量が生産できるようになれば、世界のDRAM市場にある程度の影響を与えることになるとしている。一方のYMTCは、3つの工場のキャパは合計で月産30万枚と見られており、64層3D NAND品の開発が完了すれば、これらの工場で一気に大量生産を開始する可能性があることから、もしそうなれば、数年後にはNAND市場全体に大きな影響を与える可能性があるとしている。