米国ライス大学とロスアラモス国立研究所の研究チームは、ぺロブスカイト太陽電池に光を照射すると、膨張によって結晶格子の歪みが取り除かれて、きれいに揃う効果があることを発見したと発表した。この効果を利用して、ペロブスカイト太陽電池の性能を向上できる可能性がある。研究論文は科学誌「Science」に掲載された。
今回の研究では、ハイブリッド型ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造のデバイスが用いられている。これはAMX3という形で書かれる構造で、Aはカチオン(陽イオン)、Mは2価のカチオン、Xはハロゲン化物アニオン(陰イオン)を表す。AMX3型の結晶ではこれらのイオンが立方体状に配列した構造となる。
このハイブリッド型ペロブスカイトに光を当てて、照射時間と結晶構造の変化の間にどのような関係があるか、シンクロトロンを利用したX線広角散乱分析の手法で調べた。その結果、光を当てた時間の長さに応じて結晶格子が全方向に膨張し、格子の歪みが取り除かれる効果があることが確認できたという。
この現象にともなって、太陽電池の変換効率が向上する効果があったと報告されている。デバイスの結晶構造が揃ってバルクでの欠陥が修復されることでコンタクト部でのエネルギー障壁が下がるためであると考えられている。チャンピオンデータでは、変換効率が18.5%から20.5%に増加しており、平均でもすべてのセルが19%以上の変換効率まで増加したという。
光を当てるのを止めてから30分経過しても、エネルギー障壁の下がった状態は持続した。また、実験中の温度条件は一定に保たれていたので、結晶格子の膨張原因から熱の影響は除外されている。
実験で用いたハイブリッド型ペロブスカイトについては、光照射によって変換効率が向上しただけでなく、連続使用によってデバイスの光安定性が損なわれることもないと確認できたとしている。論文によると、100mW/cm3の光照射の下で800時間連続動作させたときの最大出力点での変換効率は、ピーク値の85%を維持していた。さらに1500時間連続動作させたときにも、電流密度に目立った劣化はみられなかったと報告されている。