九州大学と富士通は4月12日、AI(人工知能)を活用した農業生産の高度化と安定性向上を目指し、4月から2年間、農業分野における共同研究を実施すると発表した。
両者は、2014年から社会課題の解決に向けた数理分野での共同研究を進めてきた。今回のこれまでの研究成果も活用し、新たに農業生産の高度化と安定性向上に向けた研究に取り組む。
共同研究では、九州大学の生体計測技術で計測された草丈や葉面積などの植物の生育状況と、植物理論に時空間変動情報(時間や位置、場所により変化する情報。今回は光合成・転流など成長に関わる情報)を取り入れた独自の植物機構モデルを、富士通の画像処理技術を取り入れ、カメラで植物の画像データを取得し、成長を示す草丈、葉数、節間長、茎径などの状態を自動で計測する技術を開発する。
具体的には、九州大学は植物の生育環境および生体情報の計測技術の研究・開発・提供、植物機構モデルの実環境への適用に向けた検証、局所適時環境調節技術(植物の特定部分に限定して適切な時間のみ温度などの環境調節を行う技術)の実環境への適用に向けた研究・開発、スマート農業教育プログラムの開発と実施を担う。
一方、富士通は植物機構モデルへのAIエンジンの組み込み、生体計測における画像処理技術を活用した植物の特徴量抽出と成長推定、AIエンジンを活用した植物の成長速度や収穫時期の予測、環境制御の最適化、これらの要素技術を統合した植物の栽培を支援する仕組みの構築を行う。
また、それらの計測データと九州大学の植物機構モデルを組み込んだ富士通のAIエンジンにより、植物の品質や目標とする収穫時期に向けた最適な環境条件を導き出し、生育状況にあわせた環境制御を行う仕組みの実現を目指す。
共同研究の成果は、富士通の農事業グループ会社の生産現場での活用を推進し、効果検証を行うとともに、農業向けソリューションとしての提供を目指す。九州大学では農業分野におけるICTの活用を促進するため国内のみならず、アジア地域など諸外国でスマート農業を実践しうる人材の育成にも取り組む。