日本電気(NEC)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、スペクトラム拡散通信方式を採用した通信衛星向けコマンド受信機を共同で開発したことを発表した。
人工衛星の状態監視や管制には、地上から人工衛星に向けてコマンド信号を送信し、人工衛星をコントロールする方法が一般的だが、世界的に人工衛星の打ち上げ数が増加していることで、隣接した周波数帯域を使用する他衛星との電波干渉による通信障害が発生している。
こうした問題の解決には、電波干渉や電波妨害に対する耐性が大幅に向上するスペクトラム拡散通信方式の採用が有効だが、同方式は従来の方式に比べ周波数検出に時間を要するという問題があった。特に、目標軌道に到達するまでの軌道遷移期間は、ドップラー効果による周波数変動および周波数変動率が大きく、初期捕捉時間が長くなることが技術的な課題となっていた。
今回、NECとJAXAは、JAXAが開発したマルチモード統合トランスポンダの設計を基に、周波数検出の時間短縮を可能とするスペクトラム拡散符号検出アルゴリズムを複数考案した。これらを計算機シミュレーションや試作検証によりひとつに絞り込み、設計パラメータの最適化を行うことで、従来方式の50倍以上(17dB以上)の電波干渉波や電波妨害波の信号強度に耐えられる性能への向上と、同程度の初期捕捉時間(平均5秒以下)を両立することに成功した。これにより、従来よりも通信障害の発生頻度が低く、負担の少ない衛星運用が可能となる。
この成果は、主に商用通信衛星が用いる周波数帯や運用形態に適合するコマンド受信機「C40」として、NEC製品にラインナップされるという。NECとJAXAは、4月16日~19日に米国で行われる世界最大級の宇宙関連産業の展示会「34th Space Symposium」で、JAXA/JETROが主催するJapanブースに、同製品を出展する予定とのことだ。