90億光年離れた恒星の観測に成功したと東京大学、東北大学の研究者も参加する国際研究チームがこのほど、英科学誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表した。銀河としては90億光年より遠い場所で見つかっているが、単独の星として見分けることができる星としては最も遠く、これまでの「約1億光年より手前」の記録を大きく上回った。同チームは、この星をギリシャ神話に登場する人物にちなんで「イカロス」と名付けた。
この国際チームには、米ミネソタ大学の研究者をリーダーとし、スペインやコロンビアの研究者のほか日本から東京大学・ビッグバン宇宙国際研究センターの大栗真宗助教や大学院生、東北大学の大学院生も参加した。同チームは、ハッブル宇宙望遠鏡(米航空宇宙局〈NASA〉などが運用)が50億光年離れた遠方で捉えた銀河団(MACS J1149+2223)の背後で光る天体を発見。詳しく解析した結果、90億光年離れた単体の星であると結論付けた。
宇宙空間に重い天体があると、大きな重力によって光が曲がる「重力レンズ」と呼ばれる現象が起きる。遠く離れた星は出す光が弱く通常は観測できないが、遠い星でも、この現象で光が集まって強く輝けば地球付近で観測できることが知られていた。今回国際チームは、イカロスが重力レンズ現象により、約2,000倍増光されたとみている。
これまで単独の星として観測されたのは1億光年より手前の銀河団の星だった。
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