シャープは4月5日、SuicaやPASMOなどの非接触型ICカードをディスプレイにかざすだけで、簡単に通信を実現する「透明NFC(近距離無線通信)アンテナ搭載ディスプレイ」を開発したことを発表した。
従来NFCは専用のカードで発行され、利用する必要があったが、近年、スマートフォンにも搭載されるようになり、将来的にはクレジットカードにも搭載される見通しとなっている。その用途としては、決済のほか、社内外の入退室などの個人認証などが主となっているが、機器同士の連携や、アミューズメント用途などのニーズも拡大しつつある。
今回開発されたNFCアンテナ搭載ディスプレイは、従来のディスプレイとNFCリーダーを一体化させたもの。その最大の特徴は、ディスプレイ上に、「ここにタッチしてください」といったような直感的な指示を出すことができるユーザーフレンドリなインタフェースを構築することが可能になるということ。また、また、カードリーダーが不要となるため、省スペース化が図れるため、システム全体のデザインの自由度を向上させることも可能となる。
同ディスプレイを実現するために新たに開発された技術は2つ。1つ目は、アンテナの透明化で、タッチパネルに用いているメタルメッシュ技術を進化させることで、タッチセンサ部をアンテナ化することに成功したという。
もう1つは、最大42型のディスプレイの全面に展開可能な「ポジションフリー技術」(それ以上の大型ディスプレイについては、現在、社内にて検証を進めているという)。ディスプレイ上に不感体なく全領域で問題なく通信を可能とする感度を実現するメッシュ化された電極配置技術、メッシュ状のアンテナのどこにNFCがタッチされたのか、を識別するスイッチング回路技術、そして高い感度で、そうしたNFCの位置を検出するアルゴリズム技術を新たに開発、組み合わせることで実現したとする。
実際に、通信距離としては2.5cmまで良好な通信を実現できることを確認しているほか、複数のNFC機器を同時に認識できることも確認しており、ディスプレイのどこに触れれば良いか、といったUIを構築できるということから、認証や決済の場における分かりやすい、使いやすい端末などの実現が可能になることが予測されるほか、従来なかった用途として、カードゲームやフィギュア(人形)の中などにRFIDを搭載することで、ディスプレイ上にそれらを配置することで、カードゲームやボードゲーム、TRPGといったようないわゆるアナログ系のゲームへの新たな価値の提供なども可能になるとする。
現在、同社では量産に向けた最終調整を進めているとのことで、タッチ範囲を固定したモデルについては2019年度からの量産開始を、ディスプレイのどこに触っても反応できるポジションフリーモデルについては2020年度からの量産開始をそれぞれ計画しており、今後もこうしたディスプレイに新たな価値を追加できる機能や技術の開発を進めていくことで、シャープのディスプレイの存在感を向上させていきたいとしていた。