理化学研究所(理研)は、共同研究グループが、生物において組織間の情報伝達を担う神経を持たない植物は、体内で作り出した移動性の「CLE25ペプチド」を使うことで根と葉の間で情報をやりとりし、乾燥ストレス耐性を高めていることを発見したことを発表した。

この成果は、理研 環境資源科学研究センター機能開発研究グループの高橋史憲研究員、篠崎一雄グループディレクター、生命分子解析ユニットの堂前直ユニットリーダー、東京大学(東大)大学院農学生命科学研究科の篠崎和子教授、同大学大学院理学系研究科の福田裕穂教授、徳島大学大学院社会産業理工学研究部の刑部祐里子准教授らによるもので、国際科学雑誌「Nature」に掲載されるのに先立ち、オンライン版(4月4日付、日本時間4月5日)に掲載される。

このほど共同研究グループは、植物に乾燥ストレスがかかったときに、根の細胞から道管にCLE25ペプチドが放出されることを発見した。さらに、このペプチドが道管を通って根から葉に移動し、ペプチドを受容する受容体に結合することを明らかにした。

また、ペプチド-受容体結合によって発せられたシグナルが、葉の維管束細胞内に伝わり、植物ホルモンの一つであるアブシジン酸(ABA)の合成を開始させる合図となることを解明した。

この成果は、乾燥をはじめとする環境ストレスに強い作物の作出や、機能性肥料の開発など植物の生育環境への植物ペプチドの応用につながることが期待できる。