アクセンチュアは4月3日に記者向けの説明会を開催し、世界19カ国、消費者2万1000人を対象に行った同社の調査をもとに、日本のマーケットに即したデータやインサイトを加えたうえで、「企業はデジタル時代の消費者に対してどう向き合うべきか」についての考察を述べた。
スマートスピーカー所有者は、スマートフォン使用頻度が低下する?
調査結果によると、「スマートスピーカー」が大きなデジタルトレンドになっていることが明らかになった。2018年に多くの国が、「キャズム」と呼ばれる普及率16%を超えるのだという。キャズムに達すると製品やサービスは急速に普及し始めるとされているが、特に近年では10%を超えたあたりから普及スピードが加速することが多い。そのため、スマートスピーカーが拡大する可能性は高いと予想されている。
実際に日本のスマートスピーカー保有者を対象にしたアンケートでは、「毎日使用している」と答えたユーザーが全体の44%。使用の満足度については「とても満足している」「満足している」という回答を合わせると、90%のユーザーが満足しているという結果が出た。
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク日本統括 マネジング・ディレクターの中村健太郎氏は「一般的にデジタルガジェットは、よほど生活に浸透しなければ毎日使うことはない。しかし、スマートスピーカーは、『週に数回使用』を合わせると8割の人が日常の中で使っていることになる。面白半分で買った人でも、実際に使ってみると予想以上に満足できているのではないだろうか」と分析する。
さらに、調査から、スマートスピーカー保有者のおよそ3分の2のスマートフォンの使用頻度が減少していることが明らかになった。
この結果について、「スマートフォンの利用が何かによって減ったということは、私の記憶では初めてだ。『すべて音声に置き換わる』『スマホが不要になる』といったことはないが、一定の体験については音声のほうが有利な状態が出てきているのだろう」と中村氏。
パソコンやスマートフォンにくわえて、ユーザーの生活シーンに音声が加わったことで、デジタル接点の多様化が起きているわけだ。
ちなみに、スマートスピーカーで最も利用されている用途は「音楽コンテンツ再生」である。
「『90年代にヒットした〇〇の曲を流して』『先週聞いた○○の曲』『今の気分に合わせた曲』といった検索方法について、利便性の高さが評価されているのではないか」と中村氏は考える。
短時間の動画を好み、視聴時の広告を許容するユーザーが多い
もう1つ、調査の結果から明らかになったデジタルトレンドは「オンデマンド動画」だ。グローバルでみると地上波と同じレベルで利用されているという。特に若年層は3~8分程度の短い動画を好み、動画の再生時間と閲覧率は反比例する傾向が強い。
中村氏は「オンデマンド動画で特筆すべきことは、追加の利用料を支払うことで広告を削除できる有料会員などについて、日本のユーザーはあまり積極的でないという点。グローバルと比較して広告の配信を許容する傾向がある」と調査結果を分析する。
なお、そのほかのトレンドとしては「自動運転」「AR/VR」が挙げられる。
企業に必要なのはマネタイズモデルの多様化
以上の結果を踏まえ、中村氏は通信・メディア・ハイテク・ソフトウェア&プラットフォームの企業に向けて、「リアルとデジタルの融合は間違いなく加速する。企業の中でリアルとデジタルを分けるのではなく、ショッピングやモビリティといったユーザーの体験を軸に考えていくことが重要だ」と提言する。
また、従来は音質やレスポンス速度といったスペックで差別化を図ることが多かったが、調査結果からユーザーはパーソナライズ化されたサービスへの期待が高いことがわかった。
そのため、「企業の競争フィールドはスペックからパーソナライズへとシフトすべき。競争優位を獲得するにはいかにパーソナライズを実現するかがカギになるだろう。加えて、マネタイズが1つのフィールドでは成り立たなくなってきていることにも注意しなければならない。ユーザーに価値を提供している場所とは異なる場所でお金を稼ぐようなビジネスモデルの設計が求められるようになるはずだ」と、中村氏はメッセージを送った。