AIアシスタントを搭載するスマートスピーカー「Amazon Alexa」「Google Assistant」の登場に伴い、カスタマー・エクスペリエンスを向上するため、AI会話型プラットフォームを導入する機運が高まっている。
先日開催されたガートナー カスタマー・エクスペリエンス サミット 2018において、ガートナー リサーチ リサーチ ディレクターのマグナス・レヴァン氏が「カスタマー・エクスペリエンスのためにAI会話型プラットフォームを活用する - より良く、より速く、より安く」というテーマの下、講演を行った。
同氏の講演をもとに、企業がカスタマー・エクスペリエンスの向上を前提に、AI会話型プラットフォームを効果的に導入するポイントを整理してみたい。
どのベンダーのサービスも基盤テクノロジーは同じ
初めに、レヴァン氏は昨今、インタフェースを学習する責任がユーザーからソフトに移りつつあるという見解を示した。例えば、AIを利用している場合、ボットがユーザーに確認を行うことになる。これにより、技術との関わりが変わり、その結果として、ユーザーエクスピリエンスを作っている人も変化が求められることになり、レヴァン氏は「これは未開発の領域」と述べた。
続いて、レヴァン氏は会話型エージェントの分類を5つ示した。5つの分類とは、「仮想パーソナルアシスタント(VPA)」「仮想顧客アシスタント(VCA)」「仮想従業員アシスタント(VEA)」「チャットボット」「ボット」だ。例えば、VPAには、Amazon Alexaが含まれ、VCAにはFacebook Messengerが含まれる。
これらすべての会話型エージェントの基盤が「会話型プラットフォーム」であり、「すべての関連するベンダーが向かっているところ」だという。レヴァン氏によると、仮想顧客アシスタントと仮想従業員アシスタントが急速に統合する動きを見せているそうだ。
「Amazon Web Servicesは、クラウドベースのコールセンターであるAmazon Connectにおいて、チャットボット構築サービスであるAmazon Lexと連携に対応している。同様に、マイクロソフトもCortanaにおいて、汎用プラットフォームを目指している。AppleのSiriもこれらと基盤テクノロジーは同じだ」
会話型プラットフォームをどう活用するか?
では、会話型プラットフォームを活用して、どのようにすればカスタマー・エクスペリエンスを強化することができるのだろうか。
レヴァン氏は、企業がこうしたパラダイムシフトを取り入れるにあたっては、3つのステップを踏む必要があると述べた。3つのステップとは、「既存のサービスを選定し、新たなパラダイムに移行することを検討する」「既存のサービスを選定し、新たなパラダイムに適合させることを検討する」「古いパラダイムでは不可能だった新たなサービスを実現することを検討する」というものだ。
3つのステップによる取り組みを開始するにあたって、会話型プラットフォームを選択することになる。その開発オプションは「セルフサービス型」と「マネージド型」の2つのタイプがあるので、用途に応じて選べばよい。
また、自社のユースケースを決める必要がある。「タスクの複雑さ」「エンゲージメントのレベル」「取引重視」「インタラクティブな会話」「情報重視」「明示的な情報」といった要素に基づき、「顧客との対話」「パーソナライズされたエンゲージメント」「一般的な質疑応答」「ガイド付きタスクの完了」といったユースケースを決めていく。
さらに、AI/会話型エージェントと人間の関係を管理する必要がある。AI/会話型エージェントを導入することで、従業員においては「 新たな作業慣行/スキルが必要になる一方、一部の役割が不要になる」「現場スタッフの役割が"英雄"から"交代要員"になる」「 システムなのか推奨なのか不透明」といった課題が生じるという。
レヴァン氏は「コールセンターで、簡単な問い合わせを会話型エージェントですべて受けて、人間のスタッフはすべて複雑な質問を受けなければならなくなったら、かえってスタッフに負担がかかることになる。会話型エージェントの導入には人間の業務が関わるので、変化を管理するプロジェクトが必要。テクノロジーを理解してから、人間を質で理解する必要がある」と説明した。
最後に、レヴァン氏は、AI会話型プラットフォーム導入に対するガートナーとしての提言を示した。
ベンダーについては、来年にかけて市場が大きく変化するため、現時点では戦略的なベンダーを選ばないほうがよいという。
最も大事なこととして、「一度にすべてをやらない。最も大きなインパクトが大きな領域を対象に概念実証(PoC)を行ってから、学ぶこと」を挙げた。さらに、レヴァン氏は「アウトソーシングしない」「人間を巻き込む」ことと説明した。
人間と仕事の在り方を大きく変える可能性がある「AI会話型プラットフォーム」。単なるITのツールととらえるのではなく、ビジネスにおいて戦略的なツールとして、導入を進めていく必要があるようだ。