米IBMは、米ラスベガスで年次イベント「Think 2018」を開催。このイベントは、クラウドを中心とした「InterConnect」と、WatsonによるAIをテーマにした「World of Watson」の2つのイベントを統合したものだ。その意味でも、Thinkでの主役は、クラウドとAIである。
開催2日目には、主要な基調講演が相次ぎ、午前中のGinni Rometty会長兼社長兼CEOの基調講演に続いて、米IBM コグニティブソリューション&リサーチ担当シニアバイスプレジデントのJohn E Kelly Ⅲ氏による「The Journey to AI」と題したWatsonに関する基調講演と、Watson & クラウドプラットフォーム担当のDavid Kennyシニアバイスプレジデントによる「Put Your Data to Work on the Cloud for Smarter Business Keynote」と題したクラウドに関する基調講演が行われ、それぞれの分野における最新動向が示されたほか、複数のユーザー企業が登壇し、最新の活用事例が紹介された。
「Watson Studio」「Watson Assistant」発表
AIでは、AIプロジェクトを促進するためのWatson API連携や機械学習、深層学習機能を強化した「Watson Studio」、日本語による学習済みインテントの提供などを含む「Watson Assistant」を発表。さらに、iOSでWatson Servicesを執行する機能を提供する「Watson Services for Core ML」の提供も発表した。
とくに、Watson Studioでは、Deep Learning as a Serviceを提供し、TensorFlowやCaffe、PyTorchなどのオープンソースフレームワークを組み込んだ、IBM Cloud上のクラウドネイティブサービスとして提供することを紹介。これにより、ユーザー企業が、機械学習を開始するためのハードルを下げることができるとした。
また、機械学習とデータ収集、管理機能を統合したプラットフォームである「IBM Cloud Private for Data」を発表し、これにより、Kubernetes上に導入されるアプリケーション層として導入。Watson Studioと連携して、機械学習のアセットやカタログ、データセットを相互に共有。データサイエンスおよびアプリケーション開発用に統合された環境を提供することができる。
さらに、AIとデータ活用のスピードアップを支援するコンサルティングチーム「Data Science Elite Team」を30人体制で設置し、将来的には200人体制に拡大することも発表した。
Power 9を搭載したIBM Power Systems AC922を発表。
一方で、Power 9を搭載したIBM Power Systems AC922を発表。x86サーバと比べて約4倍の高速化を実現し、Googleの機械学習の速度に比べて46倍高速化すると強調した。
米IBM コグニティブソリューション&リサーチ担当シニアバイスプレジデントのJohn E Kelly Ⅲ氏は、「これはNVIDIAとの協業によって実現するものであり、機械学習におけるブレークスルーになるだけでなく、AIの進化を指数関数的に加速するとともに、自動運転の進化やヘルスケア分野での改善、ブロックチェーンの浸透、データセキュリティの強化にも影響する」と語った。
また、ここでは、Watsonは、ビジネスのためのエンタープライズAIであるということが強調された点も見逃せない。
エンタープライズ向けAIで求められるのは、企業や業界が持つデータで学習できるということである。これは、あらゆるデータを取り込むコンシューマAIに比べて、使えるデータ量が少ない。つまり、少ないデータで学習する能力が求められているというわけだ。Watsonは、その点で他のAIよりも長けていることを示し、「この特徴を持つ限り、Watsonが、エンタープライズAIのリーダーであることは間違いない」とした。