新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、スカパーJSAT、情報通信研究機構(NICT)は3月20日、同2日に愛知県愛西市の木曽川河川域とその上空で、ドローンと有人ヘリコプターの間で機体間通信実験を実施したと発表した。
NEDOは、2017年度から「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で活用できるドローンおよびロボットの開発を促進するとともに、社会実装するためのシステム構築および飛行試験などを実施している。
同プロジェクトにおいて、スカパーJSATは災害現場や地上通信網が未整備の目視外のエリアにおいて、ドローン(小型無人機)の目視外飛行を可能とする運航管理システムの構築を目指した「衛星通信を利用するドローンの運航管理システムの開発」に産学官連携体制で取り組んでいる。
同事業では衛星通信機能を備えたドローンのみでなく、衛星通信機能を備えないドローンに対して、衛星通信機能を有する高高度無人航空機を介して運航管理を行うことをテーマにした各種実験に着手している。
実験では、NICTが開発したドローン位置情報共有システム「ドローンマッパー」を用いて920MHz(LPWA方式)帯で通信を行った。
同システムを搭載したヘリコプター(中日本航空所属)を用いて、愛知県愛西市の木曽川高畑地区河川防災ステーションのヘリポートを離着陸場とし、木曽川上空(片道約9km)を対地高度約150mで往復飛行。
同じくドローンマッパーを搭載したドローン(テラドローン提供)と有人ヘリコプターの位置や高度、進行方向、識別番号などの情報を地上に設置したモニター局で把握。同一空域を飛行している場合でも1秒ごとに相互に共有するとともに、ヘリ機上のタブレット画面にもドローンの位置情報を表示させることを可能とした。
さらに、高度2000m以上を飛行する高高度無人航空機を介して、広域に飛行するドローンに対する運航管理を行うシステムの開発を目指しているが、ドローンと高高度無人航空機の間の通信距離は10km以上に及ぶことも想定されている。
そのため、約9km離れた有人ヘリコプターとドローンの間を小型・小電力の通信装置でも安定して相互の位置などの情報共有ができたことから、高高度無人航空機とドローンの間の通信手段としても利用可能なことに加え、ドローンのみでなく有人機も含めて飛行中の位置や識別番号などの情報を把握し、運航状況を管理できることを確認した。
今後、実験で得られた成果と知見を無人航空機搭載用無線機器の設計と、高高度無人航空機への搭載方法、および運航管理システム機能に反映し、目視外環境下においてドローンと同一の空域を飛行する有人機の位置情報などを高高度無人航空機で集約し、衛星通信を介して把握できる運航管理システムの設計に反映していく予定だという。
また、これらの取り組みを通じて、災害現場や地上通信設備が未整備な地帯でもドローンの目視外飛行が可能な運航管理システムの実現とともに、新たな利用領域の開拓とマーケットの拡大を目指す。