国立情報学研究所(以下、NII)は、北海道大学と共同で開発したスマートフォン用アプリを用いたバスロケーションサービス「Ride around-the-corner.(ライド・アラウンド・ザ・コーナー)」の実証実験を、札幌市を中心とする地域を対象に実施すると発表した。
「Ride around-the-corner.」は、バスの位置を知りたい利用者が、バスの位置の収集にも協力するクラウドセンシング型バスロケーションサービス。同実験は、この市民参加型のモデルにより、バス事業者の負担を軽減し、利便性の高い公共交通サービスが可能となることを実証していく。
従来のバスロケーションサービスは、各々のバスに位置情報を取得するGPS受信機と、得られた位置情報を定期的にサーバに送信するための通信回線が必要となる。これをバス事業者自身が負担していくにはコスト面で課題があり、財政の厳しい自治体や事業者では導入が進んでいないという現状がある。
同実験で提供するバスロケーションサービスは、バス利用者の協力を得て成り立つクラウドソーシングモデルを採用している。各バスにはIDの付いたBluetooth信号を発する簡易なビーコンが設置され、バス利用者やバスの近くにいる人がスマートフォンに同アプリをインストールしていると、ビーコン信号が検知され、スマートフォンから利用者の位置情報とIDを合わせてバス位置情報収集サーバに転送するシステムとなっている。同様に、ビーコンをバス停に設置することで、利用者がどのバス停でいつからバスを待っていて、どの区間を乗車したのかなどをデータで取得することができる。利用動向を把握できるようになることで、効率的な計画の策定などに活用できるようになり、公共交通サービス改善などに役立てられることが期待されるということだ。
同サービスの導入では、バス事業者はビーコンを設置するのみのため、初期導入コストが相対的に低くなり、また、位置情報の取得とその通信は利用者の端末と回線を利用するため、バス事業者側のランニングコストの負担は、電池代程度となり安価で済む。バス利用者にとっては、バスの位置が分かるというメリットがあり、実質的な負担は極めて小さいため、アプリサービスへの参加・利用へのデメリットがほとんどない。
同実証実験では、北海道中央バスの協⼒で、札幌市内の路線バス3路線8系統にて、路線バスにビーコンを設置する。同時に、同アプリ実験担当者が乗車し、位置情報の収集やサーバを経由したバス位置情報の市民への提供が円滑に行えるか、その動作や課題等を検証するということだ。