電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボ(以下、イノラボ) と、東京大学暦本研究室(以下、暦本研)は、人とロボットが共生する社会に向けて、IoA(Internet of Abilities)を具現化する遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA(チカ)」のプロトタイプを共同開発したことを発表した。

同デバイスを、ZMPが開発した宅配ロボット「CarriRo Delivery」と組み合わせ、オフィス街を自律走行する実証実験を、3月20日、22日、23日の3日間、品川港南エリアにおいて実施する。

  • オフィス街を自律走行する実証実験

    オフィス街を自律走行する実証実験

近い将来、ロボットがさまざまな場所で人間の活動をサポートする社会の到来が期待されている。今後は、人との接点で起こりうる想定外の事象、例えば宅配ロボットを都市部で活用する場合に起こりうる「狭い道を人が塞いでいて通れない」、「エレベータのボタンを押して乗ることができない」といった事象にも、スムーズに対処できる能力を備えることが必要となってくる。

イノラボと暦本研は、ネットワークを介して人とロボットが互いの能力を補完しあうことで、こうした課題を解決しうるものと考え、その技術研究と社会実装を共同で進めてきた。このたび開発されたTiCAは、表面全体にLEDが配置された球体状の遠隔コミュニケーションデバイスで、遠隔にいる人の視線に応じて光る位置や光り方が変わる技術により、その場にいる人と遠隔にいる人が眼を合わせているように自然なコミュニケーションを図ることができるという。実証実験では、オフィス街を自律走行する宅配ロボットとの組み合わせにより、その有効性を検証するとともに、周囲の人の反応や行動に関するデータを収集する。

今回の実証実験では、3月20日、22日、23日の各日 15:00〜16:00に、品川港南エリアの複数の複合施設やビルにまたがる約350mのルート(品川インターシティ〜品川グランドコモンズ〜京王品川ビル間の通路)を、TiCAを装備したCarriRo Deliveryが自律走行し、商品(カップコーヒー)を目的地まで届ける。

また、想定外の事象により走行困難となった際は、TiCAを用いて遠隔から周囲とコミュニケーションをとり、トラブル回避を図る。主な検証ポイントは、「自律走行時に想定外のトラブルが生じた際、周囲の人に働きかけてこれを回避できるか」、「ロボットの振る舞いを、人がどう受け止め、行動するか」の2点。

なお、同実験には、ZMPと日本マイクロソフトが技術協力を行うほか、走行ルートとなる施設やビルを運営する新日鉄興和不動産、品川グランドコモンズおよび京王電鉄が協力する。

  • 宅配ロボットと遠隔コミュニケーションデバイスによる実証実験の仕組み

    宅配ロボットと遠隔コミュニケーションデバイスによる実証実験の仕組み

イノラボのシニアリサーチフェローを務める暦本純一氏(東京大学大学院教授兼ソニーコンピュータサイエンス研究所 副所長)は、次のように述べている。「ロボット・AI と、人間との自然な協調には大きな可能性があります。たとえば、ロ ボットだけでは解決できないような状況でも、人間が遠隔地からロボットに入り込み、周辺の人とコミュニケーションをとるなどによって、より柔軟で現実的なサービスが実現できます。このような、人間と AI の能力がネットワークを越えてつなが りお互いの能力を補完しあう社会を IoAと呼び、その技術研究と社会実装をISIDイノラボと東京大学暦本研究室が共同 で進めています。今回は、遠隔コミュニケーションデバイス TiCA を使って、遠隔地の人間が宅配ロボットに入り込んだよ うな感覚で接続する実験を行います」