鹿島建設とNECネッツエスアイは3月15日、共同で病院多床室の設備を患者個々の好みに合わせて自動制御する療養環境向上システム「NEM-AMORE(ネマモーレ)」を開発したことを発表した。
同システムは、鹿島が2016年10月に確立した睡眠環境向上技術と、NECネッツエスアイがもつ環境・バイタル情報を可視化・数値化するIoT技術およびホテル向けルームマネジメントシステムで培った環境制御技術を融合したもの。病室内に設置したセンサから得た情報をもとに、空調や照明などの設備機器をリアルタイムかつ自動で制御、最適化することで、入院患者各々の生活リズムに合わせた、快適な療養環境を「無意識に」実現する。
具体的には、患者の睡眠状態を検知する生体センサと、病室内の騒音、照度、温度などを測定する環境センサのデータを、NECネッツエスアイがもつIoT技術でサーバに収集・統合し、鹿島が確立した睡眠環境向上技術と照合。室内環境の最適解を算出する。算出した最適解に基づき、NECネッツエスアイの環境制御技術を用いて設備機器をリアルタイムに制御することで、患者それぞれの睡眠状態に呼応した、「音」「光」「温熱」それぞれの理想的な室内環境を自動的に形成するという。
たとえば、就寝時に病室内が静かすぎると、隣接する患者の生活音、廊下のスリッパ音やスタッフステーションでの作業音など周辺の様々な音が聞こえてしまい、かえって寝付きが悪くなるという。そこで「音」環境の形成では、患者の就寝時に微弱な音(ブラウンノイズ)を発生させ、ベッド周りの雑騒音を緩和することで入眠を促し、睡眠の検知後はノイズを徐々に下げ、自動的に消音する。
また、人は日中に十分な光を浴びることで夜間に深部体温が下がりやすくなり、眠りにつきやすくなることから、病室内の照度を朝方は上げて、昼以降は徐々に下げていくなど、患者の一日の生活リズムが安定するような光環境を自動的に創出。特に多床室においては、窓側と廊下側の患者で日中受ける照度にばらつきが出るため、環境センサでモニタリングしながら模擬窓照明などを補助的に活用し、廊下側でも日中に十分な照度を確保する。
「温熱」環境の自動形成では、患者の就寝時には送風により良好な温熱環境を創出し、快適な入眠と深い眠りを促し、睡眠を検知して一定時間が経過した後には送風装置を弱める一方、室内空調により温熱環境を最適に保つ。
また、患者ごとの睡眠状況や、手動で調節した明るさや温度の記録が常にサーバに蓄積されることから、そのデータをもとに患者個々の生活リズムや好みに合わせたオーダーメイドの室内環境を多床室で創出することも可能だという。