ANAは、Society 5.0(超スマート社会)の実現に向けた取り組みのひとつとして「AVATAR」事業を始動させるにあたり、「ANA AVATAR VISION」を策定したと発表した。また、賞金レース「ANA AVATAR X PRIZE」の内容を発表し、4年間にわたるレースをスタートさせた。
ANAグループが描く瞬間移動手段「AVATAR」は、災害時の救助や、医療機関の整備が進んでいない地域での治療、地理的、財政的な制約などによって十分な教育が受けられない人への教育機会の提供など、さまざまな理由で実際にその場に行くことが困難な状況においてその力を発揮する。
ANAは、これら全体の取り組みを「ANA AVATAR VISION」と位置付けており、AVATARの基礎技術を集約・発展させ、人々を繋ぎ、イノベーションを加速させていくことを目的としている。
AVATARを実現させるには、ロボティックス・VR・AR・センサー・通信・ハプティックス(触覚)技術など、さまざまなエクスポネンシャル・テクノロジー(指数関数的に急成長している技術)が必要となるが、現時点ではそれぞれの技術は個別に開発が進んでいる。そのため、複数の技術を融合してAVATARを実用化させるには、数十年を要すると予想されているという。
そこでANAは、より早い先進技術の実用化を狙い、2016年10月、XPRIZE財団が主催する国際賞金レースにおいて「ANA AVATAR XPRIZE」というアイデアを提案。同案が賞金レースのテーマに採用された。そして3月12日、賞金レース(賞金総額10 Million USD)の内容を発表し、4年間にわたるレースをスタートさせた。同社は、同賞金レースにより世界的な関心を引き付け、より早く実用化させたいと考えているという。
また、同社の取り組みとして、まずはANA AVATARクラウドファンディングなどを活用して、既存のAVATAR関連技術を用いたサービス企画やムーブメントを形成していく。さらに、大分県にあるAVATARテストフィールドで、宇宙開発・農林水産業・観光・教育・医療など、さまざまな分野で実証実験を実施する。代表的な取り組みとして、JAXAを含む産官学と連携し、AVATARによる月面施設の遠隔建設等の地上実証を行い、宇宙開発・利用を推進していく。
今後は、「ANA AVATAR XPRIZE」を主体としてマルチタスクで高度なAVATAR技術を開発していきつつ、既存の技術にアイデアを加えながら、ANAグループでのサービス化を検討していく。ANAは、「安心と信頼を基礎に世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」という経営理念を掲げており、「ANA AVATAR VISION」を通じてANAグループが描く瞬間移動手段「AVATAR」で人々を繋ぎ、世界をより良くすることに貢献していくということだ。