積水化学工業は3月13日、太陽光発電システムとホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)を搭載した住宅のエネルギーゼロ達成度の2017年における運転実績調査結果ならびに、蓄電池を搭載した住宅の運転実績調査結果を公表した。

太陽光発電システムとHEMS活用の調査の対象となったのは、2016年にセキスイハイムに入居した家庭のうち、HEMS「スマートハイム・ナビ」ならびに太陽光発電システムを搭載したオール電化住宅2951邸。2017年1月~12月の消費電力量、発電電力量、電力量収支についてのデータを収集した結果、家電を含め、エネルギー収支が電力会社からの買電よりも創出量が多い「家電込みエネルギーゼロ邸」が42%(1246邸)、家電を含まない「ゼロエネルギーハウス(ZEH)相当邸」が22%(635邸)、ZEH達成度が75~99%の「Nearly ZEH」が17%(502邸)、「非ZEH」が19%(568邸)という結果となった。

  • ZEHの達成度を4つの区分に分けて評価

    ゼロエネルギー達成度を4つの区分に分けて評価

  • ZEH達成以上の住宅は64%と、半数以上が達成している

    ZEH達成以上の住宅は64%と、半数以上が達成しているが、比率は前年とほぼ変化なしという状況となっていりう

中央値はZEH相当となる。また、前年比で消費量、発電量ともに増加をしつつ、電力収支が前年比で大きく変化していないのが2017年の特徴になるという。どこで電力消費が増加したのかについて同社が調査したところ、3月、7月、12月に増加しており、気象庁の平均気温の変化と比較したところ、3月ならびに12月は寒く、7月が暑いことから、冷暖房の消費が増加したことが消費量の増加につながったとの判断となった。また、発電量については、発電容量が7kW~10kW未満のクラスの住宅が増加している点が挙げられるという。

そのため、発電容量別にZEHの達成比率を見ると、5kW未満では低く、特に4kW未満になると、Nearly ZEHも含めたエネルギーゼロ率が7割を切ることから、同社では、いかに大容量の太陽光発電システムを搭載していくかを進めていかなければZEHは今後、増えていかないものとの見方を示す。

  • 発電容量別に見たエネルギーゼロ達成比率

    発電容量別に見たエネルギーゼロ達成比率。発電容量が多いほど、達成割合が高く、同社では少なくとも4kW以上が望ましいとしている

また、家族の人数が増加すればZEHの達成率は低下していく傾向が確認されたほか、都道府県別でのZEH達成率を見た場合、南の方に行くほど、ならびに太陽光発電システムの設置面積が広いほど達成率が高い傾向にあることも示された。

  • FITの終了以降、自家消費がトレンドとなる可能性が高い

    ZEHが普及すると、逆潮流など電力系統への影響が高まる可能性があるほか、FITの終了で売っても儲けがでない可能性もあり、自家消費の推進がそうした課題の解決策になる

一方、蓄電池を搭載した住宅の対象個数は829邸(期間は上記と同じだが、オール電化ではない住宅も含む)で、現在、FITを適用しているユーザーが利用しているモードの実測値である「経済モード運転」と、併せてFIT適用期間終了後に運用が想定される「グリーンモード」の試算が行われた。

  • 蓄電池を搭載した住宅への調査概要

    蓄電池を搭載した住宅への調査概要

経済モードは、昼間は太陽電池で発電した電力を売電して、安い深夜の電力を蓄電池に蓄え、それを消費していくという使い方。HEMSの設定で、最低蓄電残量を設定し(ユーザーによって設定可能)、そこに達した時点で放電を停止する(日によってはそこまで使用しない場合もあり)という運転で、蓄電池の容量が小さいほど、最低残量を高く設定しているユーザーが見受けられたという。この結果について同社は、安心を重視するユーザーと、経済性を重視するユーザーの2種類に分けることができ、安心:経済性の比率は、3:7~4:6程度であり、災害時の対応などを含めた安心を前提としたユーザー一定数いることが示されたとする。

  • 経済モード運転時の蓄電池の動きのイメージ

    経済モード運転時の蓄電池の動きのイメージ

またグリーンモードの場合、昼間に太陽電池から充電を行い、それを夜や次の日の朝に放電することで電力を利用するといった流れだが、天候が不順の場合、毎日充電ができるわけではないので、そこが機会損失になることを踏まえて試算した結果、蓄電池の容量が大きくなればなるほど、放電可能時間が長くなるため、容量の差が放電量の差に大きく反映されることが示されたとする。そのため、蓄電池を導入することで、蓄電池のない場合に対し、エネルギー自給率は35~60%程度まで高めることができるようになるとしている。

  • グリーンモード運転時の蓄電池の動きのイメージ

    グリーンモード運転時の蓄電池の動きのイメージ

なお、同社では2011年からの毎年のエネルギーゼロ達成率調査から、2017年の値が2016年とほとんど変化がないことを受け、達成度については安定基調に入ったとするほか、今後の売電単価の下落や、買電単価の高騰を背景に光熱費収支が年々厳しくなっていくことが想定されるとコメントしており、蓄電池の搭載などをさらに推進していくほか、調査を継続していくことで、新たな製品作りなどにも活かしていきたいとしていた。

  • グリーンモード運転時における蓄電池容量と年間放電量の比較

    グリーンモード運転時における蓄電池容量と年間放電量の比較