アビームコンサルティングは3月12日、記者説明会を開催した。説明会では、戦略ビジネスユニット 執行役員プリンシパルの安部慶喜氏が、RPAの導入企業の実態調査の結果を紹介するとともに、RPAの将来像について解説した。
導入企業の97%が5割以上の業務工数を削減
同調査は、アビームコンサルティングが日本RPA協会の協力の下で実施しているもので、今回は2017年10月から12月が調査対象期間となる。
2017年1月から6月にかけては、1カ月当たり約35件のペースで導入が進んでいたが、6月から12月にかけては1カ月当たり約40件のペースで増加しており、今年末には1000件を上回る見通しだという。
この数字はあくまでもアビームとRPAテクノロジーズの導入件数であり、「日本全国で考えると、この数字より多くなる」と安部氏は述べた。
問い合わせをしてきた企業、導入した企業のいずれもメーカーが最も多く、導入企業の第2位はサービス業、商社・小売りとなった。この結果について、安部氏は「RPAの導入は金融から始まり、次にサービス業で進み、今、導入のピークがメーカーに移っている状態。大手金融など、早期に着手した企業における導入が落ち着いた一方、中堅以下の企業で導入が進みだした」と語った。
なお、実際に導入まで至っている企業の6割は、従業員数が1000人以上、売上規模500億以上の企業が占めている。
安部氏は、RPA導入における中堅企業のポイントについて、次のように語った。
「中堅企業では、大企業に比べてシステム化されていない業務が多いため、業務が人中心となっている。よって、RPAを導入すると仕事のやり方が変わっていくことになり、現場の抵抗が大きいため、部署ごとにRPAを導入していくケースが多い」
加えて、中堅企業では「自身の仕事を改善したいという気持ちが強い」「コストが限られている」といった背景から、自社でロボットを開発し、運用していくというスタイルがとられているという。そのため、「当社としては、内製化のスピードを上げるため、スキルをトランスファーすることに重きを置いている」と、安部氏は語る。
また、RPAの導入効果としては、47%が業務の完全自動化を実現、41%が8割から9割の業務工数を削減したことがわかった。5割にまで広げると、97%の企業が業務工数の削減を達成している。
導入期間については、4週間以内の割合が前回の約8割から5割に減少した。この結果について、安部氏は「これまでよりRPAの導入に時間がかかるようになってきたが、それは処理が複雑なロボットの導入が増えているからと思われる。とはいえ、導入企業の約9割が6週間以内に導入を実現している」と説明した。
RPAとOCRを組み合わせて紙ベースの業務を効率化する先進企業も
続いて、安部氏は同社が考える「次世代型デジタルレイバー」について説明した。同社では、RPAが周辺技術と連携することで、次世代型レイバーへの進化が加速すると予想している。
現在は、RPA単体が利用される「Stage 1(Basic)」の途中にある企業が多いという。Stage 1ではルールエンジンと構造化データ認識を備えたRPAによって、PC上のルール化された定型業務の自動化が行われる。「あと2、3年はRPA単体の導入が続く」と安部氏。
そして先進企業では、RPAと認識技術を連携して、非構造化データの認識を行うことで、紙や画像などの処理を含む定型業務の自動化を実現する「Stage 2(Cognitive)」の実用化が進んでいるという。
同社は次世代レイバーの進化の過程を5つに分類しているが、Stage 3(Intelligence)は研究レベルではいいところまできているという。
安部氏はStage 2について詳細な説明を行った。Cognitiveは非構造化データの認識技術を指し、処理する非構造化データは画像・動画、音声、紙となる。日本企業では特に「紙」にまつわる作業を効率化したいというニーズが強い。紙を認識する時に用いる技術がOCRだ。
「OCRは昔からある技術だが、RPAと組み合わせることで、社内のシステムとつながるようになり、業務の効率化を実現する」と安部氏。同社はこうしたRPAとOCRを組み合わせて紙ベースの業務の効率化に取り組む複数の企業を支援してきたが、導入企業で80%前後の工数削減の効果があったそうだ。
安部氏は、「RPAを導入している企業は、デジタル化の第1歩を踏み出した。ここから、AIやCognitiveの導入に取り組むことができる」と、RPAがデジタルトランスフォーメーションのとっかかりとなるという見解を示した。