日立製作所は12日、米国のユタ大学と共同で、「糖尿病治療の処方薬選択支援システム」を開発したことを発表した。

  • 処方選択支援ダッシュボード

    処方選択支援ダッシュボード

糖尿病患者の約半数は医療ガイドラインで定められている治療目標を達成していない。治療方法や処方薬の選択によって経済的な負担が大きく、治療中断や治療薬の変更などにつながる要因のひとつとなっている。そのため、近年では、患者自らも治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受ける共有意思決定(Shared Decision Making)の考え方が重要視されつつある。

同システムは、機械学習を活用した解析を用いて、処方薬の種類別に、糖尿病の代表的な指標であるHbA1c値の低減目標(治療目標)を達成できる確率を予測し、患者別の特性も考慮した内容で、それぞれの効能・効果、副作用などのリスク、価格等の項目を連携する電子カルテの画面上で比較表示するもの。

これにより糖尿病患者は、詳細なデータを画面で見ながら、医師との話し合いにより治療方針を決める共有意思決定を行うことが可能となる。処方薬の効果だけでなく、長期的に治療を継続していくための経済的な負担も考慮し、処方薬を選択できるシステムとして患者と医師が話し合いで治療方針を決定する有効な支援ツールとなることが期待されている。

  • 糖尿病治療の処方箋選択支援システム

    糖尿病治療の処方箋選択支援システム

同システムは昨年11月、ユタ大学と共同開発した機械学習を用いた「糖尿病治療薬の効果を予測・比較する技術」を、ユタ大学の診療意思決定支援システム(OpenCDS)と統合し、次世代医療通信規格「HL7 FHIR4」を用いることで、HL7 FHIR対応型電子カルテと連携可能な処方薬選択支援システムである。開発にあたり、学習に用いるデータ数や項目数を増やすことで、「糖尿病治療薬の効果を予測・比較する技術」の予測性能も向上したという。また、同システムは、さまざまな機械学習モデルを電子カルテと連携させるプラットフォームとしても活用可能となっている。

なお、この成果の一部は、3月12〜15日(日本時間3月13〜16日)に米国サンフランシスコで開催される医療情報の学会「AMIA 2018 Informatics Summit」で発表予定ということだ。今後、日立とユタ大学は、同システムを用いた臨床試験をめざして共同研究を進めていくとしている。