日立製作所は、社会インフラや産業機器などの機械要素部品の表面処理として使用されている工業用クロムめっきに対して、環境への影響が懸念されている6価クロムを使用せずに、クロムめっきと比べ4倍の耐食性と同等の耐摩耗性を両立する多層硬質ニッケルめっき技術を開発したことを発表した。
工業用クロムめっきは、その膜の持つ硬さ、耐食性、耐摩耗性に優れた特性を材料の表面に付与でき、かつ低コストなプロセス技術であることから、各種金型、機械部品などの用途に幅広く用いられているが、クロムめっき液の主成分である6価クロムは、人体への有害性や水質・土壌への環境負荷の観点からさまざまな環境関連法規制でその使用の低減が求められており、今後、さらにその規制が厳しくなっていくことが見込まれている。
そうした社会情勢に対応するため同社は今回、耐食性に優れる一方で、結晶粒子が大きく、クロムと比較すると硬度が劣るため、耐摩耗性に課題があるニッケルめっきの金属組織を微結晶化し、耐摩耗性を向上させる特殊な添加剤を含ませることで、皮膜の硬質化を実現したほか、被めっき材料表面に層状のニッケル金属組織を形成する製膜技術を開発。これらを組み合わせた多層硬質ニッケルめっき技術により得られためっき皮膜は、JISに規定される工業用クロムめっきの硬度基準を満たすとともに、従来のクロムめっきに比べて4倍の耐食性と、潤滑油の介在する条件下の摩耗試験において同等の耐摩耗性を示すことを確認したという。
今回の成果を受けて同社では、今後、社会インフラや産業機器などの機械要素部品を対象にした実証試験を行うとともに、耐摩耗性のさらなる向上を図ることで、工業用クロムめっき代替技術としての普及をめざし、人体や環境への負荷低減を目指すとしている。