ベクターは、同社が提供するECUの測定・キャリブレーション・診断・フラッシュのための万能ツール「CANape(キャナピー)」に新機能を加え、よりシンプルな操作性の新バージョン「CANape 16.0」をリリースしたと発表した。
新バージョン「CANape 16.0」では、ユーザー同士あるいは顧客やサプライヤーとの間で日常的に行われるCANapeプロジェクトの交換が、より迅速かつ安全に実施できるようになった。関連するすべての情報とファイルはボタンひとつでデータコンテナに保存することができ、プロジェクトの受け渡し時に取りこぼしが生じないようになっている。これにより、開発者の作業やECUとのインタラクションを省力化することが可能となる。
同バージョンで新たに追加されたキャリブレーションデータ管理のための「オプションvCDM」では、すべてのユーザーが最新のデータセットと変更履歴を共有することができる。CANape内で直接、修正されたキャリブレーションデータの送信やワークパッケージの取得といったvCDMサーバーベースの管理システムをフルに利用できるようになり、他のツールを起動する必要がないという。
また、測定作業では、多数の測定ファイルが連続して生成されることがよくあるが、これらを解析・解釈するには、個々のファイルを統合し表示する必要がある。同バージョンでは、自動的にファイルのシーケンスを読み込んで結合し、全体に視覚化して解析することができるため、ユーザーがひとつひとつファイルを並べてマージするという骨の折れる作業が不要になるということだ。
さらに、先進運転支援システム(ADAS)開発分野においても、LIDARデータを他のADASシステムと並行して取得し、極めて多くの情報を含む点群として表示することが可能となった。シーンWindowには多彩なビューが用意され、オブジェクト認識の最適化アルゴリズムの解析や、複数センサーのデータフュージョン結果にすばやくアクセスできるということだ。CANapeで測定を終えたらそのままユーザーPCからvMDMサーバーに測定データを転送することもできる。
そのほか、もうひとつの新オプションである「Thermodynamic State Chart(熱力学状態図)」では、エアコンや冷却システムの開発者が特定の体積時の圧力などをp-h線図で確認できるよう表示を行う。広範な素材データライブラリーから熱物性の選択も可能だということだ。