歴史的に見ると、DRAMは主要なIC製品群の中で最も激しく乱高下を繰り返してきた市場である。その好例は過去2年間の市場の乱高下だろう。つまり、DRAM市場での売上高は2016年に前年比8%減となったが、2017年にはその反動で同77%増と急騰した。米IC Insightsは、同社が3月末に発行する予定の調査レポートにてDRAM価格の過去の推移と今後の動向を掲載する予定だが、それによると2018年もDRAM価格は高止まりする可能性が高いという。
1978年から2012年までの34年間、DRAMのビット当たり価格(ビット単価)は年率平均33%で低下してきた。しかし、2012年から2017年にかけて、DRAMの平均ビット単価の低下は1年あたり3%にとどまっている。それどころか、2017年のDRAMビット単価は47%増と上昇に転じており、これは40年前の1978年以降で最大の上げ幅で、30年前(1988年)に記録した45%の上昇を上回る値となっている。
また2017年のDRAMのビット数の伸び率は20%で、2016年の40%の半分に過ぎなかった。2018年は、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの3大DRAMメーカー各社ともに、再びビット出荷量を20%ほど増やすものと見られている。
しかし、2017年5月から2018年1月までの9か月間のDRAMビット数の平均成長率(前年同月比)は13%であった一方、2017年1月から2018年1月までの月ごとのDRAMの1Gビット当たりの価格は上昇を続けており、その結果、2018年1月の価格は1年前に比べて47%増という値となっている。
DRAMは製品需要の弾力性があるため、半導体の中でも石油のような日用品と考えられてきた。例えば、石油価格が低い場合、消費者の多くは燃費を気にしないで好きな車を購入するが、石油価格が高騰した場合、消費者は通常、小型車や代替のエネルギー車(HVやEV)を選ぼうとする。正確に数字で示すのは困難だが、DRAMのビット使用量もこうした弾力性の影響を受けるというのがIC Insightsの見解である。価格が高騰すれば需要は増えず、価格が下がれば使用量が増え、新たな用途も拓ける。したがって、電子機器メーカーは、現在出荷されている電子機器のDRAM搭載量を縮小はしていないものの、一部のスマートフォンメーカーは次世代モデルでDRAM搭載量を減らす(例えば計画していた5GBではなく4GBに変更する)といった噂が複数出回っている。
なお、IC Insightsは、大手のDRAMサプライヤが、2018年も価格を下げずに、顧客から苦情が殺到したとしても利益を確保し、株主を優遇するほうを選ぶだろうという見方を示している。そのため、可能性の低いifの話であるが、中国の新規DRAMメーカーが今後数年以内に競争力のある製品を出荷することができれば、DRAMユーザーは高価格を維持し続ける大手メーカーから逃れて新しい中国メーカーに流れるだろうともしている。