名古屋大学は3月7日、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)において、持ち運び可能な微生物センサを開発したと発表した。
同成果は、名古屋大学 大学院工学研究科の馬場嘉信 教授、安井隆雄 准教授、矢崎啓寿 大学院生らと、九州大学 先導物質化学研究所の柳田剛 教授、大阪大学 産業科学研究所の川合知二 特任教授との共同研究によるもので、ImPACTにおける宮田令子プログラム・マネージャーが担当している研究開発プログラムの一環として行われた。詳細は、米国化学会誌「ACS Sensors」(電子版)に掲載された。
近年、環境測定デバイスの分野では、効率のよい物質サイズの計測センサとして、電流計測センサが注目されている。そのセンサは低ノイズな実験室において広く使用されているが、屋外におけるバイオエアロゾルなどの実サンプル計測は、実験室のような理想の環境下とは異なり、サンプルの分析や検出が正しく行えない欠点がある。
研究チームは今回、これまでに開発してきたバックグラウンド電流の抑制技術に着目し、ノイズが入る条件下においても影響なく微粒子の検出ができる計測センサを開発した。これにより、計測系が壊れにくく頑丈になり、薄く軽いシールドによって持ち運び可能な電流計測センサを開発することに成功した。
またこのセンサは屋外や極限環境(温度4℃・湿度20%~温度40℃・湿度100%)でも動作することが確認された。さらに、同センサを用いることで、再現性良く、直径500nm~1000nmの粒子を計測できることも明らかとなった。加えて、同センサで計測した黄色ブドウ球菌の直径分布は、電子顕微鏡によって得られる分布と高い精度で一致することも確認されている。
なお同成果を受けて研究グループは、「このセンサを実用化に結びつけることで、環境中のさまざまな微粒子を研究室に持ち帰ることなく、オンサイトに検出することが可能になる。これにより、食品工場や空港などにおける感染症対策の分野での応用が期待される」などとコメントしている。