日立産業制御ソリューションズは、溶融金属が鋳型内部に注湯される際の湯流れ解析の高機能化、凝固解析時間の短縮および操作性向上を目的に機能を拡張した鋳造シミュレーションシステム 「ADSTEFAN(アドステファン) Ver.2018」を日本国内向けに販売開始した。

  • 湯流れ解析の移動物体考慮機能によるダイカスト鋳造シミュレーション例

    湯流れ解析の移動物体考慮機能によるダイカスト鋳造シミュレーション例

「ADSTEFAN」は、素形材の製造現場における鋳造欠陥を事前に予測する鋳造シミュレーションシステム。ブラックボックスである鋳型内への溶融金属の流入や凝固状態をシミュレーションし、その過程を3次元で表現する。これにより、試作回数の低減や開発期間の短縮、品質向上が可能となり、コスト低減と省資源化を実現する。同システムは、1999年に販売開始して以来、ユーザー企業からの要望はもとより学術機関、パートナー企業などとの共同研究の成果に基づく機能拡充や製品性能改善を積極的に実施しており、毎年バージョンアップを行っているという。

  • 凝固率制御機能の拡張による凝固率と解析所要時間の関係図

    凝固率制御機能の拡張による凝固率と解析所要時間の関係図

「ADSTEFAN Ver.2018」は、ユーザー企業から特に改善要望が多かった、湯流れ解析の高機能化、凝固解析時間の短縮、操作性の向上を目的とした機能が拡張された。具体的には、溶融金属の流れ方や温度変化に影響を与えるラドル、プランジャーチップ、ストッパなどの移動状態を再現することで、より実鋳造に近い湯流れ解析を実現。選択した部材を凝固率計算の基準とすることで、無駄な計算を省略し、解析時間の短縮が可能となった。

また、ダイカスト鋳造、重力鋳造、低圧鋳造といった鋳造法ごとのインターフェースを設け、鋳造現場でのオペレーション業務を再現した操作性を実現。従来に比べ流入条件入力作業の工数削減が可能となった。さらに、解析結果を比較する際に、複数枚を並べて表示することで、視認性を向上。Webブラウザやプレゼンテーションツール表示に適したアニメーション画像の出力が可能となり、報告資料活用においての利便性を向上させているという。

同システムは、日本語、英語、中国語の3言語に対応し、インド、中華人民共和国および東南アジア地域などに向けても順次販売が開始されるという。同社は、国内外の社会インフラ、自動車、輸送機器の研究・設計・開発・製造部門を対象に、年間150ライセンスの販売をめざすということだ。