2001年から04年にがんと診断された人の10年生存率は55.5%だったと国立がん研究センターは2月28日に発表した。昨年の調査より1.3ポイントとやや上昇した。10年生存率は一昨年初めて出され、今回で3回目。発表された数字は2000年代の初めのころにがんと診断された人の生存率。その後新たな抗がん剤や診断法が開発され、がん治療は部位別で差はあるものの全体としても進歩している。同センターは最近診断された人の10年生存率は目立って上昇するとみている。今後は膵臓(すいぞう)がんなど、依然生存率が低い難治がんの早期発見方法の開発などが重要課題となる。
同センターは、2001年から04年に全国20施設でがんと診断、治療を受けた約5万7千人のデータを分析、集計した。その結果、部位別では、前立腺がん(92.4%)、甲状腺がん(86.0%)、乳がん(82.8%)などの生存率が高かった。一方、膵臓(すいぞう)がん(5.0%)、肝臓がん(14.6%)、胆のう胆道がん(15.2%)などは低く、依然完治に向けた治療が難しい状態が続いている。
10年生存率の分析、集計、発表は今回で3回目だが、今回から計算方法を変更した。昨年発表の10年生存率は58.5%と発表されたが、新方法で再計算すると54.2%となり、今回の数字は昨年比1.3ポイント上昇したことが分かった。
がん生存率は、がんと診断されてから一定期間を経た後に生存している確率。例えば10年生存率は、日本人全体を見て10年後に生存している人と比較、がんと診断された人が10年後に生存している人の割合を示す。ただし部位によって数字はかなり異なり、個々の診断例も治療内容など多くの要素が関係して診断、治療後の予後は個々の患者によって異なる。生存率は多くの症例をまとめた平均の数字で一人一人の患者の余命を決めるものではない。このため生存率に関する数字は調査データを個別に細かく見る必要があり、多くの臨床医が、余命は最善を尽くす治療と患者自身の闘病の仕方で大きく変わる、と指摘している。
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