リコージャパンとスカパーJSATは3月2日、リコーのテレビ会議・Web会議システム「RICOH Unified Communication System(RICOH UCS)」および電子黒板「RICOH Interactive Whiteboard(RICOH IWB)」などと、スカパーJSATの衛星通信サービス「ExBird」を組み合わせ、災害時の自治体の情報伝達・共有を実現するシステムの提供で協業すると発表した。

  • リコーのテレビ会議・Web会議システム「RICOH Unified Communication System(以下、RICOH UCS)」

  • 電子黒板「RICOH Interactive Whiteboard(以下、RICOH IWB)」

両社が提供するのは、災害発生時のインターネットが利用できない環境下でも、対策本部と災害地域などの遠隔地を衛星通信で接続し、映像や音声などを通じて情報伝達・共有を図り、初動対応を迅速に行うためのシステムで、3月5日から提供する。

  • 活用イメージのデモ。拠点1(右側)では、RICOH UCSに接続されたRICOH IWBに情報を書き込んでいる。拠点2(左側)では、プロジェクタで拠点1の情報を表示させ、情報共有を図っている。RICOH IWBはOCR機能をもち、手書き文字をテキストに変換できる

スカパーJSATは現在17機の通信衛星を保有しており、5機はスカパーなどの多チャンネル事業に利用。残りは船舶や航空機への通信サービス、緊急地震速報、防災災害プラットフォームサービスのほか、今回の衛星IPネットワークサービス「ExBird」などの宇宙・衛星事業に利用している。

  • スカパーJSATが宇宙・衛星事業に利用している通信衛星(JCSAT-2B、2016年5月打ち上げ)の模型

  • スカパーJSATが衛星の管理を行っている横浜衛星管制センター(主局)。ほかに茨城と山口に副局がある

「ExBird」は日本全国をフルカバーした衛星通信によるIPネットワークサービスで、データプランでは、最大128kbpsの場合で1拠点月額55,000円、最大400kbpsの場合で1拠点月額95,000円で利用できる。これをレンタルのアンテナ、IDU(In Door Unit)を使って送受信する。

  • 衛星アンテナ+ODU(Out Door Unit)

  • IDU(一番右)。一番左のものは、通信状態を最適化するためにアンテナを調整するための装置

今回の両社の協業は、IDUとRICOH UCSを接続。RICOH UCS経由で電子黒板のRICOH IWBやプロジェクタなどにつなぎ、自治体や電気・ガスなどのインフラ企業に情報共有するしくみを共同で提供していこうというものだ。

  • システムの活用イメージ

リコージャパン 執行役員ICT事業本部 商品企画本部 本部長 木村和広氏

リコージャパン 執行役員ICT事業本部 商品企画本部 本部長 木村和広氏は、今回のソリューションの意義について、「災害時には、初動対応のための通信が課題となっている。スカパーJSATさんは、日本で唯一の衛星通信事業者であり、リコーとの相性がいい。2社の協業によって、電話では伝えることことができない情報をリアルタイムで共有できる。今後はこのしくみを災害拠点や自治体、インフラを提供する企業などに提案していきたい」と語った。



スカパーJSTAT 宇宙・衛星事業本部 専任部長 瀬尾淳氏

一方、スカパーJSTAT 宇宙・衛星事業本部 専任部長 瀬尾淳氏は「両者は非常用通信分野で協業し、2015年からの実証実験により、災害情報を手書き記入することで、情報共有できることや、Wi-Fiスポットを作り、帰宅困難者の通信手段を確保できることを確認してきた。今回のシステムで、災害情報をIWBに手書き記入し、OCR変換してリアルタイム共有したり、傷病者の情報をIWBの傷病者リストに転記し、リアルタイムで病院と共有して、搬送前に患者の症状を把握することが可能なる」と両者で提供するシステムメリットを語った。

ただ、課題もある。いつ発生するかわからない災害に向けて、どの程度予算を割いてもらえるかという問題だ。そこで、リコーでは、日常における活用法を合わせて提供することで、拡販につなげたい考えだ。リコーでは、今後3年間で1000件の受注を目指している。