東京大学(東大)は3月1日、生殖細胞を守る小分子RNAであるpiRNAにおいて、piRNA生合成因子として知られるPAPIおよびZucchiniに焦点を当てた生化学的解析を進め、piRNA生合成機構の仕組みの一端を解明したと発表した。
同成果は、東京大学大学院理学系研究科の西田知訓 特任助教、塩見美喜子 教授を中心とする研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Nature」に掲載された。
約30塩基長の小分子RNAであるpiRNAはPIWIタンパク質と結合し、トランスポゾンの利己的転移によるゲノム損傷から生殖細胞の遺伝情報を守る役割を担っている。
この機能の破綻は、親から子に誤った遺伝情報を伝搬するとともに、卵子・精子形成不全を導くため、ヒトを含む生物にとってpiRNAの機能は欠かすことができない。しかし、piRNAの生合成の仕組みには多くの不明な点が残されていた。
今回の研究では、カイコ卵巣生殖細胞に由来する細胞株を用いて、piRNA生合成因子であるPAPIおよびZucchiniに焦点を当てて生化学的・生物情報学的な解析をすすめ、これら因子の機能の詳細を明らかにするとともに、piRNA生合成機構に関する新規モデルを提唱することに成功したという。
今回の成果を受けて研究グループは、piRNA機構は、線虫からヒトにわたる多くの生物で高く保存されており、piRNAの機能損失は不妊につながることから、今後、ヒト不妊発症の原因の解明や診断、また創薬につながることが期待されるとしている。