新潟大学は、同市の中学生を対象とした共同研究において、心肺持久力と筋力の両方が低い中学生では、代謝異常リスク(生活習慣病あるいはメタボ傾向)を有する可能性が相乗的に高くなることを明らかにした。この結果から、同大は体力テストが中学校の生活習慣病高リスク者の発見に有用であるとしている。
この成果は、新潟大学 大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科の曽根博仁教授、森川咲子氏、同研究科 健康寿命延伸氏、生活習慣病予防治療医学講座(阿賀野市寄附講座)の藤原和哉特任准教授らと新潟県阿賀野市によるもので、2017年12月19日、米国の医学専門誌「Pediatric diabetes」に掲載された。
青少年期の代謝異常は、将来的に動脈硬化を促進させることから、早期発見と生活習慣改善が望まれている。しかし、青少年期は血液検査や血圧測定を含む健康診断を受ける機会がないため、発見されにくい。
大人の場合、心肺持久力が高いことが生活習慣病予防に重要であることは知られているが、最近では筋力も生活習慣病と関連することが注目を浴びている。 しかし、青少年においては、これら複数の体力指標と生活習慣病指標との関連を調べた研究は少なく、特に心肺持久力と筋力との組合せがどのように生活習慣病指標と関連するかは明らではなかった。
新潟大学医学部と新潟県阿賀野市は、新潟市民の健康寿命延伸を目的に中学生生活習慣病予防事業を行っており、中学2年生の生徒に対して血液検査や血圧測定を含む健康診断や生活習慣実態調査を実施している。
今回、その結果と体力テストの結果とを併せて解析したところ、心肺持久力(20m シャトルランの成績)と上肢筋力(握力の成績)の両方が低い者は、両方が高い者と比べ、統計学的有意かつ相乗的に約4.3倍代謝異常リスクが高いことが判明した。
しかし、たとえ低筋力の者であっても、同時に心肺持久力も低くなければ、心肺持久力も筋力も高い者と比較して代謝異常リスクは有意に高まらないことも確認された。
今回の研究結果から、心肺持久力と上肢筋力の両方が低い者は、両方とも高い者に比 べ、高代謝異常リスクに該当する可能性が相乗的に上昇することが明らかになった。 同時に、心肺持久力が中程度以上であれば、筋力が低くても共に高い者と比べて代謝異常リスクは高まらないこともわかった。
これらのことから、心肺持久力と筋力の両方が低い中学生は代謝異常リスクが高いことから、運動を強く勧める指導を行っていく必要があると考えられる。
今回は、心肺持久力に加えて上下肢の筋力を評価することにより、中学生の代謝異常リスクをさらに細分化して評価し、重点指導対象者を絞り込むことが可能となった。