スイスのヴィーム・ソフトウェアは2月27日、都内で事業戦略説明会を開催し、ハイブリッドクラウド向けのアベイラビリティ(可用性)プラットフォーム「Veeam Availability Platform」製品群の新製品「Veeam Availability Orchestrator」を発表した。
企業のDR戦略をサポート
新製品は、企業のディザスタリカバリ(DR)戦略をサポートするため、DRの計画・実行に要する時間、コスト、労力を軽減する自動化製品。レプリケーション機能を活用したオーケストレーションエンジンで、仮想環境に合わせてDRおよびコンプライアンスの計画立案、テスト、ドキュメント生成の自動化などの機能を備えている。
また、復元の確実さを検証するためのテストと結果確認を日時設定、およびオンデマンドで実施可能であり、テストに際しては実稼働環境に影響を与えないという。さらに、ITサービスの継続性を確保するため、サービスやアプリケーションの動作を確認しつつ、マルチサイトのDRのフェールオーバー/フェールバックを実行する。
Veeam Software アジア太平洋担当 グローバル・クラウド・グループ・シニア・ディレクターのアサンガ・ワニガタンガ氏は「将来的に新製品のオーケストレーションエンジンを、われわれのプラットフォームに組み込むことを考えてる」と、新製品の見通しについて触れた。
ユースケースの例としては、ランサムウェアの攻撃を受け、ネットワークのどこかのエンドポイントで発見した際に自動的にスナップショットを作成し、フォレンジックの分析を行い、侵害されているエンドポイントを切り離した上で、最終的にエンドポイントをリストアするところまで自動化することなどを挙げていた。
同氏は「高いレベルのインテグレーションと積極的な対策を講じる環境を自動化し、ユーザーに提供することを検討していく」と、今後も継続して開発に取り組む方針を示した。
買収・技術提携でVeeam Availability Platformを強化
一方で、Veeam Availability Platformの強化にも取り組んでいる。1月にはAmazon Web Services(AWS)向けのバックアップ、DR、レプリケーション機能を提供しているN2WSを買収。同氏は「N2WSの技術を取得することにより、ブロックストレージやEBS(Elastic Block Store)などのデータベースアーキテクチャにネイティブで対応できる」という。
さらに、UNIXベースのOS「IBM AIX」と「Oracle Solaris」をサポートするため、昨年12月にはCristie Softwareとの技術連携を発表しており、2018年中にソリューションを提供開始する。
同氏は「われわれは仮想化環境に対応することから事業をスタートしたが、AIXやSorarisをはじめとした物理環境を利用している企業もいるため、新たな機能開発を進めている」と、述べた。
これらの取り組みについて、ワニガタンダ氏は「新たな技術をストックし、われわれのアーキテクチャに統合することで、さまざまなプラットフォームを1つの可視化ソリューションで見えるようにするためだ。また、さまざまな技術を統合する中で、全体を網羅するようなオートメーションを実現する製品の開発にも取り組んでいる」と、買収・技術提携の意図を説明した。
世界一遅れている日本のデータ保護
日本の事業展開については、ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長兼バイスプレジデントの古館正清氏が説明した。
同社は、グローバルにおいて2020年に向けてデータ保護ソフトウェアのトップベンダーを目指しており、成長戦略として「エンタープライズ市場におけるリーダーポジションの獲得」「アライアンスビジネスの拡大」「新ソリューションの拡大」の3点を挙げている。
これにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代において24時間365日無停止でアクセスできるアベイラビリティを実現するとしている。
同社がグローバルで実施した独自の調査結果によると、66%の企業がアベイラビリティの不足は重大な懸念であると回答したほか、管理者と利用者間の期待値にはギャップがあり、ビジネスの損失は年間平均25億円とコスト負担が強いられ、IT部門だけでなく、他部門にも影響を及ぼすという。
一方、日本のエンタープライズ企業におけるデータ保護に関する課題として古舘氏は「バックアップはしているがリストアできない、データ保護のプラットフォームが標準化されていない、可視化と計画が不十分、インフラ多様化への対応の遅れなどがある。日本は世界で一番データ保護に関するシステム対応が遅れている」と指摘している。
日本での事業展開とは?
では、世界一データ保護が遅れている日本における同社の施策とは何か。同氏は次世代のデータ保護プラットフォームの要件として「『標準化』『可視化』『自動化』となるが、われわれはこれらの領域に対して、製品を有している。最大の特徴は、復元率を高めるための、さまざまな機能を盛り込んでおり、復元の単位を小さくしているほか、検証する仕組みなどを備えている」と、強調する。
そこで、同社はVeeam Availability Platformと「Veeam Availability Suite」を中核とした製品を提供している。
Veeam Availability Platformは、無停止ビジネスの継続性、DXのアジリティ、解析と可視化を提供するという。「オンプレミス、パブリッククラウド、SaaS、マネージドクラウドをはじめとしたハイブリッド環境において、共通プラットフォームでソリューションを提供している」と古舘氏。
また「Veeam Availability Suite」はバックアップ、リカバリ、レプリケーション、監視を含む製品であり、仮想・物理システム問わず対応できる。同氏は「われわれはエンタープライズの顧客に対し、すべてのデータ保護のシステムを統合プラットフォームを提供していくことを加速する」と、意気込む。
日本における事業展開では「パートナーエコシステムの拡充」「エンタープライズビジネスの拡大」「クラウドにおけるデファクトスタンダード」「日本市場に適合した営業・サポート体制の拡充」の4点をポイントとして挙げた。
パートナーエコシステムの拡充については、チャネル・アライアンス営業を強化し、エンタープライズビジネスの拡大に関してはエンタープライズの営業専任組織を新設。
また、クラウドにおけるデファクトスタンダードを目指すため、クラウドビジネスの専任組織を新設し、営業・サポート体制の拡充では営業・SEの人員増強、サポート組織の拡充、日本市場の要望に合わせたプログラム・ドキュメントを取り揃えていく方針だ。
最後に古舘氏は「日本はシステムに対するアベイラビリティの対応が世界一遅れているため、われわれでは顧客のアベイラビリティをとビジネスの継続性を改善していくことを達成し、No.1のシェア獲得を目指す」としており、今後の同社の取り組みに期待がかかる。