矢野経済研究所は、国内のCAD/CAM/CAEシステム市場の調査を実施し、その結果を発表した。調査によると、2017年度の同市場規模は3,637億円の見込みとなるが、国内製造業におけるエンジニアリング分野のクラウド化には、保守的な方針の企業が多いという。
同調査は、2017年6月~11月に機械系CAD/CAM/CAEシステムメーカー、EDA(Electronic Design Automation)システムメーカー、土木・建築系CAD システムメーカーを対象として、同社専門研究員による直接面談及び電話・メールによるヒアリングにて行われたもの。
市場概況と展望
日本国内のCAD/CAM/CAEシステム市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、2016年度は前年度比6.3%増となる3,513億円となった。2016年度の景気の緩やかな回復や、地域未来投資促進事業(ものづくり等補助金)の影響などもあり、中小企業の製造業を中心とした設備投資が回復し、同市場にも好影響を与えた。2017年度については、雇用・所得環境が引き続き改善し、民需を中心とした景気回復が見込まれるため、設備投資についても、生産の増加や企業収益の改善等により、前年度比3〜4%程度の増加となると見込まれる。こうしたことを背景に、2017年度の同市場は、3,637億円(前年度比3.5%増)になると見込まれるという。
注目される動向
これまでのCAD/CAM/CAEシステムメーカーのビジネスモデルは、大半がライセンス販売であったが、外資系大手ベンダーは利用した期間に応じて料金を支払うサブスクリプション方式に切り替えつつある。同方式はクラウド経由での提供を前提としたものとなるが、国内製造業におけるエンジニアリング分野では、クラウドを本格利用するに至っていない。同時に、国内のCAD/CAM/CAEシステム市場は、巨大な販売パートナーが多く、かつ、その多くが複数のCAD/CAM/CAEシステムメーカーとパートナー契約を結んでいるため、同方式は販売パートナーにとってメリットが乏しく、従来型の提供形態をとる他メーカー製品への移行提案が起こりやすい。
また、現在CAD/CAM/CAEシステム市場において、AIはまだ大きなインパクトを与えていないが、ディープラーニングのようなAIは画像処理と相性が良いことから、いずれ利用が進むと考えられる。そのほか、プラットフォーム化の進展も注目される動向であるが、国内製造業のエンジニアリング分野ではクラウドコンピューティングに対し、保守的な姿勢が残っているため、それほど大きなインパクトを与えていない。しかし、CAD/CAM/CAEシステムメーカー各社とも製造業向けのプラットフォームサービスを提供開始しており、いずれは移行していくものと考えられるということだ。