サイボウズは2月26日、都内で2017年12月期決算と2018年度事業戦略説明会を開催し、US事業におけるクラウド基盤にAmazon Web Services(AWS)を採用すると発表した。
国内の自社基盤から切り離し、AWSを採用
同社では日本と米国の運用基盤を切り離すことで、同国における開発スピードの向上、攻めの事業展開を可能とし、2019年1月頃の運用開始を予定している。同社 代表取締役社長の青野慶久氏は「USの『kintone.com』の開発基盤を国内基盤『cybozu.com』と切り離し、US事業の拡大に向けてkintoneをリブランディングする」と、述べた。
同社がAWSを採用した背景としては「生産性の高いマネージドサービスの充実」「エコシステム」「エンタープライズへの対応力」の3点を挙げている。
利用を検討しているマネージドサービスは「Amazon Aurora」「Amazon Elasticsearch Service」「Amazon Elastic Container Service for Kubernetes (Amazon EKS)」の3つ。
エコシステムについては、ドキュメントやブログなどのコンテンツが充実していることに加え、ユーザー事例が大量に存在し、かつトラブル対応も強力だという。エンタープライズの対応力は権限設定などセキュリティ関連機能の充実、各種セキュリティ認証への対応実績を有している点を評価した。
今後、AWSでのシステム構築運用を得意分野とする人材の採用にも注力し、人材採用については、当面は国内での活動を予定している。AWSでのサービス提供開始後は、同じAWSを利用するサービスとの連携などエコシステムの拡大にもフォーカスする方針だ。
2018年は売上高100億円突破か? - 昨年に引き続き好調なクラウド
同社の2017年12月期の売上高は、前年比18.2%増の95億200万円(期初予想89億円)、営業利益が同55.7%増の8億200万円(同3億3300万円)、経常利益が同39.9%%増の8億2100万円(同3億3900万円)、純利益が同35.7%増の4億1400万円(同1億5200万円)。特にクラウド関連サービスの売上高は同39.5%増の56億4900万円となり、昨年に引き続き好調な結果となっている。
青野氏は「売上高が95億円となり、2018年には100億円を突破する見込みだ。特にクラウドが売上高の59%を占め、今期は3分の2に拡大するだろう」と、見通しを語った。
グループウェア事業では、無料版グループウェア「サイボウズLive」が2019年4月15日にサービス終了することから、中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」や大規模・中堅企業向けグループウェア「Garoon(ガルーン)」への移行を促していた。
主力製品の導入社数は2018年1月時点でサイボウズ Officeが5万7000社、Garoonが4600社、業務アプリ構築クラウド「kintone(キントーン)」が8000社、メール共有システム「メールワイズ」が6500社となっている。
サイボウズ Officeは2期連続で過去最高売上高を更新。ユーザーアンケートでは、Officeが自社初のグループウェアと回答する割合が56パーセント、知り合いの勧めで導入したユーザーが36%、60代~80代の人が利用している企業は67%と、国産グループウェアとしての評価が高いという。
Garoonについては、クラウド版ユーザーの約4割がkintoneを併用しているため、グループウェアの基本機能強化として一部コントラスト比などがアクセシビリティの達成基準「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG) 2.0」を満たすようにした。また、他社サービスとの連携を拡大しており、例えばチャットボットツールと連携し、予定登録の簡素化が図れるサービスなどがある。さらに、5月からはREST APIを順次搭載する。
kintoneに関しては、活用しているユーザーによる業務改善プロジェクト成功の秘訣や活用のコツをそれぞれの視点で解説し、ノウハウやアイディアを交換するイベント「kintone hive」を福岡、仙台、名古屋、大阪、東京の5都市で3月から開催。
さらに、1月からは業務改善に必要な基礎知識、アプリデザインやカスタマイズスキルの保有を証明する「kintone認定資格制度」を開始し、専門分野やスキルレベルにより4段階6種類の資格を用意している。
4月からは全クラウド製品を対象に「チーム応援ライセンス」を提供
同社は4月から特定の条件を満たす任意団体、NPO法人向けに全クラウド製品を対象とした「チーム応援ライセンス」(3月中に詳細の発表を予定、社会福祉法人、一般社団法人、財団法人などの法人格、アカデミック・ガバメントライセンスの対象となる団体は対象外)を提供開始する。
対象製品はサイボウズOfficeのプレミアムコース、Garoon、kintoneのスタンダードコース、メールワイズのプレミアムコース。青野氏は「マンションの管理組合やPTAなど多様なだんたいに活用してもらいたい」と、期待を口にした。
2018年の業績予想は売上高が108~113億円、営業利益と経常利益が400~700億円、純利益が100~400億円を計画しており、状況に応じて柔軟に投資を増減していく考えだ。
また、2018年は「脱・東京一極集中」を掲げており、2018年中に大阪の拠点を2倍に増床するほか、2020年までに広島・福岡など開発拠点の設置を予定。さらに、時期は未定だが、横浜にはハブ拠点を設けることを検討している。