ブラウン大学の研究チームは、鉛を含まない新規ペロブスカイト材料を発見したと発表した。低コストで製造できて変換効率の高いペロブカイト太陽電池への応用が期待される。研究論文は「Joule」に掲載された。

  • 鉛フリーの新規ペロブスカイト太陽電池材料

    鉛フリーの新規ペロブスカイト太陽電池材料Cs2TiBr6 (出所:ブラウン大学)

ぺロブスカイト太陽電池は、近年の研究開発の進展で変換効率が飛躍的に向上しており、商用のシリコン太陽電池に匹敵する23% 台の変換効率が報告されるようになっている。ただし、実用化を進める上では使用環境での耐久性に課題が残っていることに加え、多くのぺロブスカイト材料に毒性の高い鉛成分が含まれていることも問題視されている。

研究チームが今回報告したCs2TiBr6は鉛フリーのチタン系材料であり、無機ペロブスカイト太陽電池の有力な候補材料であるとしている。薄膜化して太陽電池セルに用いたときの環境ストレス(熱・湿度・光など)に対する材料安定性が高いという特徴があるという。

研究チームのNitin Padture氏は「チタンは地球上に豊富に存在し、丈夫で生体親和性も高い材料だが、ペロブカイト太陽電池の研究では見過ごされてきた」と指摘する。

先行研究では、コンピュータシミュレーションによって、チタン、セシウムおよびハロゲン成分(臭素・ヨウ素)からなる鉛フリーのペロブスカイト材料が可能であることが示されていた。今回の研究では、実際に太陽電池セルを作製し、このシミュレーション結果を実証したことになる。

同材料は特に、ペロブスカイト太陽電池をシリコン太陽電池など既存の太陽電池セルの表面に積層したタンデム型太陽電池を形成するのに向いているという。これは同材料のバンドギャップが1.8eV(電子ボルト)程度あり、室温でのシリコンのバンドギャップ(1.1eV程度)よりも高いためである。シリコンの上層に同材料からなる薄膜層を形成したタンデム構造化によって、シリコンのバンドギャップでは吸収できない高エネルギー(短波長)の太陽光を吸収できるようになり、太陽電池全体としての変換効率が向上すると見込まれている。

同材料単独での光電変換効率は3.3% で、鉛ベースのペロブスカイト材料と比べると変換効率は相当低いが、研究チームは「まったく新規の材料としては良いスタートである」とコメント。今後の研究開発による性能向上の余地は大きいとしている。

鉛フリーのペロブスカイト材料はこれまでにもいくつか報告されており、有力なものとしてスズ系の材料などがある。スズには環境中で錆びやすいという問題があるが、今回使われているチタンは錆に強い。

また、他の鉛フリー・ペロブスカイト材料の開放電圧(電極をつながない状態での電圧)が0.6V未満であるのに対して、今回の材料は開放電圧が1V程度と比較的高いという特徴もある。開放電圧が高いということは、太陽電池に用いたときの電圧の最大値をそれだけ高くできる可能性があることを意味している。