京都大学(京大)は、第一、第二世代の抗うつ剤同士で効き目と副作用を比較した臨床試験結果を集め、統計的に処理することで、21種の薬剤の特徴を網羅的に比較・評価した。その結果、特に効果の強い抗うつ剤や比較的副作用が起こりづらい薬剤が判明したと発表した。

  • 抗うつ剤21種の特徴を網羅的に比較

同研究は、京都大学医学研究科の古川壽亮教授、オックスフォード大学のAndrea Cipriani准教授らの研究グループによるもので、同研究成果は、英国時間2月21日にエルゼビアの医学誌「The Lancet」にオンライン掲載された。

うつ病は、抗うつ剤を用いて治療を始める例が多い疾患だが、どの薬が効果的なのか、副作用がどの程度起きやすいのか、数十種に及ぶ薬剤を網羅的に比較した研究はなく、根拠に基づいた治療戦略を取れているとは必ずしも言えないのが現状となっている。一方で、数種の抗うつ剤と偽薬の効果や副作用の頻度を直接比較した臨床研究は世界中でいくつも行われているため、今回の研究ではこれら過去の研究データを統合し、臨床研究では直接比較していない薬剤同士の比較を試みた。

今回の研究では、世界各地で行われてきた抗うつ剤のランダム化比較試験で二重盲検化されている研究結果522件、延べ11万6,477人分のデータを収集、統合した。データは大人を対象とし、第一、第二世代の抗うつ薬21種と偽薬の効果を直接比較した試験が選ばれた。

集めた試験結果の正確性や被験者の症状、人数の違いを吟味しつつ、21種の薬剤の特徴を網羅的に比較・評価したところ、アミトリプチリンやエスシタロプラムなど8種の抗うつ剤は特に効果が強いこと、エスシタロプラムを含む6種の薬剤は比較的副作用が起こりづらいことが分かった。

今回の結果は、医師の個人的な経験や印象だけではなく、根拠に基づいた投薬治療を進めていく上で重要な参照情報になると考えられ、うつ病治療のガイドラインや医療政策を策定する際にも参照すべきとしている。また、同研究グループは、今後開発される薬剤についても、引き続き同様のエビデンスを積み重ねていく必要があると考えているということだ。