日産自動車とディー・エヌ・エーは2月23日、共同開発中の無人自動車を用いた交通サービス「Easy Ride」の実証実験を、横浜市・みなとみらいエリアにて開始すると発表した。
実証実験は3月5日より開始し、公募の中から選ばれた一般モニター約300組が参加する予定。
今回の実証実験では、実験車両に一般モニターを乗せ、あらかじめ定められた合計約4.5Kmのコースを、自動運転によって往復運行する。1回の運行における最大乗車人数は2名。自動運転レベル2での実施のため、運転席にはドライバーが着席。助手席にはシステム確認を行うスタッフが乗り込む。将来的には運転席の乗員をなくし、完全自動運転を目指す。
実験車両にはレーザースキャナを6つ搭載。ミリ波レーダー 、GPSも搭載している。また、カメラを13台用いており、信号機の表示はカメラの画像で判断している。高速道路での運行よりも読み取るべき情報が多いために多くのセンサ類を備えるが、それらが目立たないよう、車と調和するデザインに留意したという。
乗降を行うのは、「日産グローバル本社」、「パシフィコ横浜」、「けいゆう病院」、「横浜ワールドポーターズ」の4か所。乗車予約は専用アプリで行うが、目的地を直接指定する以外に、「やりたいこと」をテキストか音声で入力し、表示された候補地から選択することもできる。
実証実験では利用料などはとらず、アプリも無料で提供する。会場では、「ハンバーガーを食べたい」というリクエストに対し、ワールドポーターズ内の店舗を案内するデモが行われていた。
実験車両内にはタブレットを設置し、走行ルート周辺のおすすめスポットや最新のイベント情報約500件を紹介、店舗などで使えるクーポンを約40件用意した。
実証実験で走行中の車両の位置や状態を、リアルタイムで把握することが可能な遠隔管制センターを両社共同で設置する。このセンターには遠隔操縦の機能はなく、実証実験では遠隔管制のテストを行う。この管制室のおよび専用アプリのUIのデザインはDeNAが手がけており、利用者視点から見ても、先進的なイメージが伝わりやすいビジュアルで整えられていた。
運行地域の航空写真に対して、車両の走行情報をリアルタイムで重ねている。青いラインで示されているのがスキャナの読み取りデータとなっている。走行時は、周囲の車両に追随するような運転ではなく、法定速度を遵守して一定速度で走行する。
管制センターでは、運行監視だけでなく、利用者からの問い合わせ対応なども行う。自動運転による運行に注目が集まるが、「サービス」として完成度を高めるためのトライアンドエラーの期間でもあるとしている。
タクシー・バスは「競合ではない」
オートモーティブ事業を担当するDeNA 中島宏氏は会見の中で、同サービスの展開においては地域経済との連携が重要であると強調した。今回の実験で展開しているクーポンの提供に限らず、より発展的な施策の展開が期待できるとした。サービス利用料などはこの実証実験の結果を受け、仕組みなど含め決定する段階だが、一つの例として、料金の一部を実際の提携店舗が出資する形態を挙げた。
そして、これから解決すべき課題として、乗降拠点、充電拠点をどう増やして行くか、法整備に関する交渉など、多岐にわたる壁があると言及。タクシーやバスなど既存の交通サービスとは「競合するものではない」として、すでにやりとりを行なっている事業者からは、同サービスに対するへの反発はまったくないと強調。神奈川県タクシー協会とは互いの役割分担などについて勉強会を開くなど、良好な関係を築けるようなビジネススキームを構築したいとした。
今後、今回の実証実験ステップ1として、次にエリアの選定やパートナーの開拓などを進める「限定環境サービス」に取り組み、2020年早期に「本格サービス」の段階へ移行することを目指す。
同サービス展開の背景には、都市部の交通網の間隙が多く、長距離の徒歩移動が多く発生していること、高齢者などの「交通弱者」の増加が挙げられた。
本格サービスが実現すれば、現在のカーシェアリングのような、「所有しない」自動車の利用方法としての選択肢が広がることになる。多くの壁はあるものの、まずは実証実験でそれらが明確化し、実現への道程が進展することを期待したい。