パナソニック コネクティッド ソリューションズ社は、同社が新たに展開するディープラーニング顔認証システム「Face PRO」を構成する、ディープラーニング技術を応用した「顔認証サーバーソフトウェア」および「顔登録拡張キット」を、2018年8月より販売を開始すると発表した。本稿では、2月20日に行われた記者発表会の様子をお届けする。
発表会の冒頭で、同社 セキュリティシステム事業部 事業部長の島田伊三男氏は、従来の監視システムは"キレイに撮影してしっかり保管する"というパッシブなセキュリティシステムであったが、同システムは撮影した映像をより一層活用するために、カメラ内に組み込まれたAIエンジンがユーザーの必要とするデータを判断して最も活用しやすい形で取得(AIセンシング)し、さらにそれを素早くリアルタイムで解析してエッジ側とセンター側で分散処理をさせることによって、高精度で素早い情報活用を行う「アクティブなIoT情報活用ソリューション」であると説明した。
続いて登壇した市場開発部 部長の朝比奈純氏は、パナソニックが30年近く前から顔認識の技術開発を進めてきたことを明かした。
また、同技術はさまざまな実証実験への参画や官公省庁への納入、コンシューマー分野およびB2Bへの展開がすでにされており、代表的な取り組み例として、コンシューマー向けにはデジタルカメラやムービーカメラ、テレビ、そしてB2B分野では2017年10月から運用が開始された「羽田空港の顔認証ゲート」を紹介した。なお、セキュリティやマーケティング活用の分野では、監視カメラを組み合わせた顔認証システムを2011年から展開しているということだ。
同氏は続いて、ディープラーニング顔認証システム「Face PRO」の特徴を紹介した。これまで難しかった斜め顔(従来比2倍以上、左右±45度や上下±30度に対応)や経年変化、サングラスを装着している場合でも照合が可能となっているのに加え、2018年中には、マスク着用による一部顔が隠れた状態でも照合を可能にする機能拡張のリリースも予定されている。同製品で使われる顔認証エンジンは、ディープラーニング最先端技術を保有するシンガポール国立大学(NUS)と共同開発したもので、昨年4月にNISTの評価基準において、世界最高水準を達成しているということだ。
加えて、従来被写体の動きや逆光で見えにくかった顔などの映像に対し、カメラが自動的に移動物体、移動速度、顔、光量のシーンを検出し、顔認証により最適な設定をリアルタイムに行うことで、顔認証に最適な顔画像を撮像段階から狙って自動調整する「iA(インテリジェントオート)モード」を搭載する。
この製品に同梱される「ベストショット・ライセンスキー」を、別売りの同社製ネットワークカメラ「i-PRO EXTREME」シリーズにインストールすることで、カメラの前を通過した際に撮影された同一人物の複数枚の顔画像から、顔認証に必要な画像のみをカメラ側で自動的に厳選し、さらに顔部分のみを切り取ってサーバー側に送ることが可能となっている(ベストショット機能)。
これにより、ネットワーク負荷が1/10に、顔認証サーバーの負荷が約1/5に軽減し、ネットワーク機器や通信コスト、サーバーの数を減らすことでシステム全体のコスト低減にもつながり、10台以上のネットワークカメラを接続したシステムの場合、ベストショット機能を使わない従来型に比べて約40〜50%のコスト削減が可能となるということだ。
「Face PRO」の運用例としては、あらかじめ登録した要注意人物をカメラが検知すると、監視センターのメインモニターにアラームで通知され、人物の映像確認を即座に行うとともに、マップ上にその場所を表示する。対象人物の行動は分割ライブ画面で追いかけることができるが、もし見失った場合でもその人物の顔検索を行うことで、対象人物の通過経路を即座に確認することが可能で、警備員を派遣するなどして事案の未然防止や解決に貢献するという。
また、同製品には最大2000台のカメラを接続し、大規模・多拠点のシステムを構築することができる。例えば、複数エリアにまたがるチェーン店舗などでは、顔の登録業務やメンテナンスを行うサーバー設備を1箇所にまとめることで、管理コストの削減にも貢献する。前述したベストショット機能により非常に少ないネットワーク負荷、サーバー負荷でシステムを構築できることから、各拠点に顔認証サーバーを設置することなく、よりシンプルで少ないシステムコストで運用できるようになっている。
なお、今回発売されるのは、顔認証サーバーソフトウェア WV-ASF950(標準で1万人登録/カメラ4台)と、顔登録拡張キット WV-ASFE951W(追加1万人、最大3万人まで拡張可能)の2製品。これらの製品を、既に販売されている同社の顔認証カメラシリーズやカメラ拡張キット、映像監視ソフトウェア、機能拡張ソフトウェアを組み合わせることで、「Face PRO」のシステムを構築することができる。どちらも発売開始は2018年8月で、価格はオープン。