欧州を中心に世界の主要国で導入が進んでいる再生可能エネルギーの発電コストが2010年から17年までの7年間で大幅に低下し、世界平均で太陽光は73%、陸上風力は23%下落したとする報告書を、米国、日本、欧州連合(EU)など世界の180カ国近くが加盟する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)がこのほどまとめた。報告書は太陽光のコストは20年までにさらに半分に低下すると予測している。

  • alt

    画像 再生可能エネルギーコストに関するIRENA報告書の表紙(IRENA提供)

  • alt

    写真1 都市での太陽光発電のイメージ写真(IRENA提供/IRENA報告書から)

  • alt

    写真2 陸上風力発電のイメージ写真(IRENA提供/IRENAプレスリリースから)

この報告書は英文名「Renewable Power Generation Costs in 2017」。同報告書によると、 17年の太陽光の発電コストは世界平均で1キロワット時当たり10セントで、10年時点と比べて73%下落した。また、陸上の風力の発電コストは同6セントで、7年間で23%下落した。一方火力など化石燃料による17年の発電コストは分析例によって幅があるが同5~17セントの範囲。これらの数字は、太陽光や陸上風力による発電コストは化石燃料エネルギーにほぼ匹敵しつつあることを示している。

IRENAの報告書はまた、最先端技術を導入した太陽光や陸上風力による発電所は2019年までに1キロワット時当たり3セント以下の低コストで電力供給でき、20年までに太陽光の発電コストは17年のさらに半分になると予測している。再生可能エネルギーのコストが下がる要因について報告書は、科学技術イノベーションにより発電設備の製造、設置コストが下がる一方、発電設備の発電効率が向上することなどを挙げている。

IRENAのアドナン・アミン事務局長は報告書の中で「再生可能エネルギーへの転換は、単に環境への配慮という点だけでなく、経済的にも賢明な決定だ。再生可能エネルギーへの転換傾向が来年以降も続いて各国の経済成長や雇用を促進して人々の健康改善のためになり、各国をレジリエントな国にして(激しい)気候変動を緩和すること(に寄与すること)を期待している」としている。

日本も現行の「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)の中で再生可能エネルギーの導入を促進する方針を示しているが、2030年の目標電源構成比率で太陽光は7%、陸上に海上を合わせても風力はわずか1.7%。導入先進国と比べ導入比率は低くコストは高い。このため経済産業省や同省資源エネルギー庁は、コストを下げるために関連事業者間の競争を促進し、設備の導入、維持費を低減するための政策を進めている。

IRENAは、再生可能エネルギーを世界的に普及させ、各国に導入を促進するために2009年に設立が決まり、11年4月に正式に発足した国際機関。主な活動は、再生可能エネルギー利用の分析、検証や政策上の助言のほか、加盟国の技術開発支援などを目的にしている。外務省によると、17年7月現在、米国、日本など150カ国と欧州連合(EU、加盟28カ国)が加盟している。日本は設立当初から理事国(計21カ国)で分担金分担率は米国に次いで2位(約11%)。

関連記事

「再生可能エネルギーで世界のGDPは増える国際機関IRENAが分析」

「風力発電総設備容量293万キロワットに 世界全体の0.8%」