コンバージドシステムを提供する米Datrium(デイトリウム)は2月14日、1月末に日本法人であるデイトリウムジャパン合同会社を設立し、日本市場における事業展開を開始すると発表した。
同社が提供するのは、仮想化環境における分散型システムである「Datrium DVX(デイトリウム ディーブイエックス)」。この分野では、現在、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)が注目されているが、同社が目指すのは、HCIの次世代システム。
DVXのDは、「Distributed(分散型)」、Vは「Virtual(仮想化)」、Xはさまざまな機能を有するという意味だという。
「Datrium DVX」は、I/O高速化ソフトウェア「DVX Software」、フラッシュ搭載サーバ 「DVX Compute Node」、データ保護機能を有したストレージ「DVX Data Node」で構成。「DVX Software」は、ソフトウェア単体としても提供し、フラッシュを搭載した一般的なサーバにインストールして利用することが可能。なお、「DVX Software」は、同社のハードウェアで実行する場合と、サードパーティのx86サーバで実行する場合で、機能差はないという。
「DVX Software」はVMware vCenterプラグインとして表示され、「Datrium DVX」システム全体を管理するだけではなく、稼働する仮想マシン(VM)単位でのIOPS、スループット、レイテンシー、キャッシュヒット率などの細かいレベルで履歴管理を含めて状況を把握することができるという。
販売価格は、DVX Softwareはノードライセンスで180万円、DVX Data Node(2Uラックタイプ、実効容量14TBまたは29TB)が1,072万5,000円~、DVX Compute Nodeが(1Uラックタイプ、キャッシュ領域SSDはオプションで選択可能)186万7,500円~。
最新バージョンで基本機能を装備
「Datrium DVX」は、サーバ内に搭載されたCPUに近い場所のフラッシュストレージを大容量キャッシュとして利用し、必要なデータをすべてサーバに置き、ネットワークのボトルネックから解放。同社では、VMwareやKVMなどの仮想化環境を最大1,800万IOPSまで高速化させることができるとしている。
また、エンドツーエンドでの暗号化、圧縮と重複排除を常に行い、スナップシュットやレプリケーションなどのソフトウェアも標準で搭載する。
そのほか、キャッシュデータを、後工程としてデータ保護処理を行ったのち専用ストレージであるDVX Data Nodeに格納することで、サーバ内のフラッシュに万が一障害が発生しても、専用ストレージがI/Oを担い、障害が復旧したあとは、再度キャッシュデータとしてシステム稼働を継続させることができるという。
また、「Datrium DVX」のデータをAmazon Web Serviceにバックアップするソフトウェア「Cloud DVX」も用意する。
実行環境は現在、vSphere、KVX、Dockerの3つに対応するが、今後、Hyper-Vも対応する予定。
DVXは昨年の2月に最初のバージョンでVirsion 1.0をリリース。そして、ここ1年で3回のバージョンアップを行い、2月18日には最新の4.0がリリースされる予定で、これによってベースの機能搭載が完了するという。
3つの領域に注力
Datriumは、2013年、VMwareの技術者およびData DomainのCTOなどの出資によって米国で設立された企業で、現在の従業員数は150名ほど。これまで、北米のみ製品を提供してきたが、基本機能が出揃ったことから今年から海外展開を開始、今回の日本法人は初の海外展開となる。現在のワールドワイドのユーザーは300社ほどいるという。
米Datrium CEO/共同創業者のブライアン・バイルズ(Brian Biles)氏は、Datrium設立の理由を、「創業当時、仮想化に向いたシステムが存在しなかったため、Datriumを設立した。そのとき、HCIとは別のアプローチで、これまでHCIベンダーが実現できなかったものを製品化しようと思った。プライマリストレージとセカンダリストレージ、さらにクラウドも1つにしたシステムを作ろうと思っており、Amazon EC2/S3のような使い勝手の良いシステムをオープンでスケーラブルな形で、オンプレミス向けシステムとして提供する。現在、Pure StorageやNutanixが注目されているが、われわれはこれら2つの領域を1つの製品でカバーしていこうと思っている」と説明。
また、同氏はDVXの特徴や日本を最初の海外展開の地域として選んだ理由については、「われわれは、Tire1のHCI領域、HCIのバックアップ、Amazonなどを利用したクラウドマネージメント領域の3つにフォーカスする。特徴はこれら3つの1つのシステム上で実現する点だ。これまでは。北米のみで販売していたが、提供すべき機能のコアが完成したことから、新たに他の地域でも提供することになった。今年は、北米以外で販売する最初の年だ。最初にアジアを選んだのは、ヨーロッパに比べ、成長率が高いためで、その中でも日本を選んだのは、ITの進捗が安定しているからだ」と述べた。
米Datrium VP(プロダクト統括担当) レックス・ウォルターズ(Rex Walters)氏は、「DVXはレスポンスももちろんだが、スケーラブルなシステムを目指している。仮想化環境で重要なポイントは、データをSSDやメモリなどアプリケーションの近くに置くこと、安全でサーバ障害が他に波及しない点(データを失わず守る)、分散型でオープン(どんなベンダーのハードウェアでも利用できる)でスケールアウトが柔軟にできることの3つだ。われわれの特徴はソフトウェアに特化している点で、それによって、これらの重要な点をすべてを満たしている。アプリケーションで必要なデータはサーバ上に置き、ストレージにはコピーを置いているだけだ。DVXは128サーバまで拡張でき、1.6PBまで1つのネームスペースで管理できるスケーラブルなシステムだ。利用するハードウェアに制限はなく、お客様が選んだ構成で動作させることができるため、非常にオープンだ」と、自社製品の優位性を語った。
国内施策としては、広報活動に注力
日本ではノックスが2016年から国内での販売サポートを行っていたが、今回デイトリウムジャパンを設立し、本格的に国内販売を開始する。
ノックスの営業本部 本部長代行 加瀬光晴氏は、Datriumの魅力について、「既存のストレージの環境やHCIにとって代わる製品だと判断して、取り扱いを開始した。今後、中核になるのがDatriumだ。最近はPoC段階のユーザーが導入するケースが増えてきた。これらのお客様からは、パフォーマンスがすばらしい、容易な導入と運用、コストメリットがあるといわれている。今回デイトリウムジャパンが設立され、今後、日本市場を拡大する上でのイニシアティブをとってもらえることに期待している」と挨拶した。
前ティントリジャパン社長で、新たにデイトリウムジャパン 代表執行役員社長に就任した河野通明氏はDatrium について、「これまで、長い間ストレージ業界にいるが、Datrium の技術を知ったときは衝撃を覚えた。それをみなさんに伝えるのは難しいが、他社が追随することを諦めるような、とにかくめっぽう速い。また、管理が容易だ。現在のシステムを生かした形で、追加ができるのも特徴だ。仮想化で実現したい機能はすべて持っており、仮想化において時代を変える製品だと思っている。今後、国内での代理店を増やしていくというのは当たり前だが、まずは、こういうアプローチで仮想化を実現する製品が世の中にあるということを知ってもらいたい。それをやっていくのが、最初の仕事だ」と、まずは、広報活動に注力するとした。