新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ゼオライトの高速合成法、粉体の微粒子化法などを組み合わせ、低温から高温までの幅広い温度帯で、高い触媒活性と耐久性を示す自動車用NOx浄化触媒を開発したと発表した。
同研究は、ファインセラミックスセンター、東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、栃木県産業技術センター、三菱ケミカル、アシザワ・ファインテックらの共同研究チームによるもので、NEDOの新たな自動車用NOx浄化触媒を開発するためのプロジェクトとして行われた。
ゼオライトは、分子サイズの細孔を有する結晶性のアルミノケイ酸塩化合物で、イオン交換剤や触媒、吸着剤として用いられている。同研究では、ゼオライト構造の最適化と結晶内の欠陥を極限まで低減させることにより、200℃以下の低温での活性が高く、高温での耐久試験後もほとんど劣化せず高い活性を維持するゼオライト触媒を開発した。
また、新たに開発した反応物(ゼオライト原料混合物)と高温の水を混合させることで、高速昇温を実現する二液混合型流通合成システムにより、通常数日から数週間程度かかるゼオライトの合成を、数分から数十分、短いもので6秒という短時間で行うことに成功した。今回得られた触媒は、これらの技術を活かして合成されたNa型ゼオライトにCuイオンを導入することで調製しているもの。
合成されたゼオライトは、適切な粒径に整粒してCuイオンなどの活性点を導入することにより、初めて触媒として使用できる。同研究では実用化を見据え、シミュレーションによるスケールアップ方法とゼオライトの非晶質化を最低限に抑えた粉体の微細化技術を開発し、細孔容積がほとんど変化しない量産レベルの微粉砕機ビーズミルの運転条件を把握した。さらに、ミリングにより壊れた部分を再び結晶化させて粒径を制御する技術、Cuイオンを導入するためのAlをゼオライトの骨格から適切に除去し、活性点密度をコントロールする技術の開発にも成功した。
そのほか、触媒評価手法の開発も行い、透過型電子顕微鏡法(TEM)によるゼオライト内の組成の定量測定を可能にしたほか、ゼオライト骨格に導入された金属イオンの直接観察、精密な吸着法による細孔特性の評価も可能となったという。
今回開発された触媒は、低温での活性向上に加え、高温での耐久試験後もほとんど劣化せず高い活性を維持することから、従来使用できなかった温度帯での使用が可能となり、自動車の燃費が向上することが期待されるという。さらに、今回の研究成果を技術基盤として応用することで、NOx触媒をはじめとする種々のゼオライト系触媒の高性能化が期待されるということだ。