SOLIDWORKSの年次イベント「SOLIDWORKS WORLD 2018」が2月5日(現地時間)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開幕。本稿では、同イベントの本格スタートとなる「DAY 1」(6日)の全体セッションで明かされた内容、および個別インタビューにてCEOのジャン・パオロ・バッシ氏が語った開発方針についてレポートする。
デスクトップとクラウドを「つなげる」
バッシ氏は冒頭、変化の激しい昨今の産業界の状況を「産業のルネサンス」と形容した上で、それを加速させるのは知識であり、同社として2つの方向から、ユーザーの知識の獲得を支援していくとした。
ひとつは「自動化」。フローのなかにシミュレーションがリアルタイムに組み込まれることで、意思決定の課程において何百ものパターンの可視化が必要となる。それを実現するのがAIであり、大量の情報を、活用可能な知識に転換する役割を担うと語った。
もう一つは「統合」。IoTの設計にはメカニカル/エレクトリカル設計、電磁波解析などさまざまな要素が必要なことを挙げ、知識が複数の領域の間を自由に流れるような状況を指してこのキーワードを掲げた。
続けて、SOLIDWORKSが3Dエクスペリエンス・プラットフォームを中心として、従来のデスクトップ製品とオンライン製品の2本柱で展開していくと言及。こうした構成にしたことには、ユーザーからの要望を受けたことが理由にあるとして、「ユーザーに選択肢を提示することに加え、ビジネスを成長させ将来につなげるために"次に来るもの"も用意しておきたかった」と言及した。
将来的にデスクトップ製品とクラウド製品いずれかに一本化する想定はないかと問われたバッシ氏は、「クラウド製品は拡大していくと考えているが、現状は両方を展開していく。また、デスクトップ製品が不要になるかどうかというのは別の問題。たとえば、ブラウザ版のFacebookを使う一方、モバイルアプリも利用するという使い分けはありうる。この両者をつなげる努力を続けていきたい」と語った。
クラウド3D CADツール「xDesign」に進捗
SOLIDWORKSや3DEXPERIENCEプラットフォームに関連して、5つの新発表がなされた。中でも、2016年の同イベントで披露されたジェネレーティブデザインを実現するWebツール「X Design」が、ブラウザ上で動作するクラウドベースのCADツール「SOLIDWORKS xDesign」として再リリースされたことが印象深い。AIを活用し、条件定義を行うと最適な形状を提案する機能を持つと語られた。
また、「SOLIDWORKS xDesign」の特徴として、PCだけでなくタブレット、スマートフォンなどマルチデバイスで利用可能な点が挙げられた。すでに利用したユーザーは、当初テザリング環境であってもスムーズに利用でき、またSOLIDWORKSに慣れ親しんだ人であれば問題なく扱える操作感だとコメントしていた。現在はベータテストの段階にあり、20人ほどのユーザーが利用しているが、今後はこの利用ユーザーの数を増やしていく。2018年末までにおよそ7000人の規模にまで拡大することを目標に掲げた。
一方、クラウドベースの3D CADツールとして、もうひとつ「SOLIDWORKS Product Designer」が発表された。メカニカル設計のためのアプリケーションで、こちらはブラウザ上ではなくPCへのインストールを行って使うものとなっている。バッシ氏は、このツールの対象ユーザーを「3DEXPERIENCEへの完全移行を考えている人々」だとして、3DEXPERIENCEとの緊密な連携を行うと強調した。
製造業のAmazonをめざす
同時に、製造サービスプロバイダーとコンテンツプロバイダーによるオンラインのエコシステム「3DEXPERIENCE Marketplace」が正式発表された。これは、同社が認定した参画企業に対して、部品の供給や製造を委託するためのプラットフォームとなっており、取引のトレーサビリティーも担保する。バッシ氏は「Amazonが小売りを変えたように、インダストリーそのものを変えることになる」とコメントしていた。
また、設計の初期段階においては活発な意見交換が大切だとして、SNSのようにやりとりが可能なWebサービス「3DEXPERIENCE Social Collaboration Services」が発表された。SOLIDWORKSで作った3D CADデータをセキュアな環境下でやりとりできるため、円滑な情報交換が行えるとしている。
さらに、「SOLIDWORKS 3DEXPERIENCE PLM Services」のリリースが明かされた。これまでSOLIDWORKSに関しては「SOLIDWORKS PDM」「SOLIDWORKS Manage」といった管理ツールがリリースされ、PDM(製品情報管理)およびプロジェクト管理をカバーしていた。それが今回、同ツールのリリースによって、要件管理なども含めより包括的な管理が可能になるとした。提供開始は2018年後半を予定している。