カーネギー研究所の研究チームは、新規な窒化チタン半導体Ti3N4の合成に成功したと発表した。優れた機械強度と光電子特性を有しているという。研究論文は、米国の学術誌「Physical Review Materials」に掲載された。

  • 窒化チタン半導体

    ダイヤモンドアンビルセルを使った超高圧高温条件下で合成された窒化チタン半導体Ti3N4の結晶構造 (出所:カーネギー研究所)

標準的な窒化チタン(TiN)はチタン原子と窒素原子が1対1の比率で結合した化合物であり、その結晶構造は食塩(NaCl)に似ている。TiNは研磨特性のある金属であり、工具のコーティングや電極の作製などに使用される。

一方、チタン原子3個に対して窒素原子4個が結合した窒化チタン化合物Ti3N4については、以前からその存在可能性が理論的に指摘されていた。元素周期表上でチタンと同じ第4族に属するジルコニウム(Zr)などでは、Zr3N4といった比率の化合物が存在しているため、チタンでも同様の結晶構造があり得ると考えられてきたが、これまで実際に合成されたことはなかった。

研究チームは今回、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いて、74GPa(約74万気圧)、約2200℃という超高圧高温条件下で、立方晶構造をもつTi3N4を合成することに成功したという。

超高圧高温条件下で合成された物質がTi3N4であることは、高分解能のX線回折によるその場観察、およびラマン分光法によって確認したという。また、理論モデルを用いたコンピュータシミュレーションによって、Ti3N4の熱力学的性質と物理特性についての予測も行った。

チタン系の半導体材料は太陽光を利用した水分解反応による水素生成の触媒などとしてよく利用されている。今回のTi3N4は半導体であることに加えて、金属のTiNのような機械強度と耐磨耗性をもつと考えられていることから、電子デバイスへのこれまでにない応用が期待される。

また、第一原理計算などの理論からは、Ti3N4半導体のバンドギャップが0.8~0.9eV(電子ボルト)であり、これまで予想されていたよりも大きな値となることが示唆されるとのことだ。

論文の筆頭執筆者であるVenkata Bhadram氏は「今回の研究は、常圧でのTi3N4合成を目指したさらなる実験・理論研究を触発するものになるだろう」とコメントしている。