ヴイエムウェアは注力分野の1つに「エンドユーザーコンピューティング」を据えている。もともと同社はクライアント向けVDI製品として「Horizon」を提供していたが、モビリティ管理「AirWatch」やデジタル ワークスペース「Workspace ONE」など、今、EUC関連の製品の幅が広がっている。

本稿では、同社のチーフストラテジストを務める本田豊氏の説明をもとに、同社のEUC事業の最新動向をお届けする。

  • ヴイエムウェア チーフストラテジスト 本田豊氏

エンタープライズ向けセキュリティとコンシューマー製品のようなシンプルさを実現

初めに、本田氏は同社のEUC製品から構成されるプラットフォーム「Workspace ONE」について説明した。EUC分野においてプラットフォームが必要とされる理由は、企業では、部門ごとにデバイスやアプリケーションが利用されるようになってきており、それらを管理するためのコストが増えているうえ、運用管理が複雑化しているからだという。こうしたデバイスとアプリの"サイロ化"を解消するのが「Workspace ONE」となる。

「Workspace ONE」は「統合エンドポイント管理」と「ID&アクセス管理」から構成され、「エンタープライズ向けのセキュリティ」と「コンシューマー製品のようなシンプルさ」の両立を目指している。

統合エンドポイント管理を担うのが「AirWatch」だ。モバイルデバイス、デスクトップデバイス、IoTデバイスなど、あらゆるデバイスを管理するとともに、安全性を確保する。「AirWatch」では、コンテキストによって、デバイスが社内のコンプライアンスに違反していないかどうか、ロケーションが社内か社外かといったことを管理できる。ちなみに、「AirWatch」は単体で利用することも可能だ。

一方、「ID&アクセス管理」を担うのが「VMware Identity Manager」だ。Windowsアプリケーション、Webサービス、モバイルアプリケーションなど、あらゆるアプリケーションのIDとアクセスを管理する。ユーザーはポータルサイトにログインすれば、割り当てられたアプリケーションをすべてシングルサインオンで利用することが可能になる。ちなみに、32 ビット版 Windowsアプリケーションの仮想化を行うのが「Horizon」だ。

  • ヴイエムウェアのEUCプラットフォーム「Workspace ONE」の概要

なお、「Workspace ONE」は「Application Access」「Standard」「Advanced」「Enterprise」4つのエディションから構成され、それぞれ利用可能な機能が異なる。

JMPで実現する「管理の自動化」と「柔軟なインフラ」

次に、本田氏はこの1年で行われた「Workspace ONE」の機能強化について説明した。まず1つ目は、企業で利用されているOSに対するサポートの拡大だ。特に、macOSとchromeの強化に注力しているそうで、「Google以外のベンダーがChromeをサポートしたのは初めてではないか」と本田氏は語った。Windows 10については、高度なBitLockerの管理、ビジネス向けWindowsストアに対応するなど、最新の管理機能に対応している。

  • 「Workspace ONE」における最新のエンドポイント管理

加えて、ウィザードでOffice 365を展開可能になったことも紹介された。これまでは、Office 365の展開にコンソールが2つ必要だったという。

続けて、本田氏は複雑なVDI環境をシンプルに提供するため、「管理の自動化」と「柔軟なインフラ」に注力すると述べた。この2つを実現する技術が「Just-in-Time Management Platform(JMP)」となる。

JMPは、VMware App Volumes、Instant Clone、User Environment Managerを連携させることにより、ユーザープロファイルの管理を簡素化しつつ、デスクトップ/アプリケーションの配信に要する時間を短縮する。

例えば、ユーザーがログインすると、JMPによってオリジナルのデスクトップが瞬時に構築、提供される。ログインするたびにデスクトップが構築されることは、セキュリティの強化にも役立つ。

本田氏はさらに、Instant Cloneがストレージの容量を減らすことができる点にも触れた。Instant Cloneは、作成時に仮想ディスクを親仮想マシンと共有するだけでなく、親のメモリも共有する。

「JMPは、ユーザーにオリジナルの環境を提供しながら、ストレージのコストを抑えることができ、VDIのいいとこどりを可能にする」と本田氏。

最後に、今度の展望として、データの活用を進める機能「Workspace ONE Intelligence」と「Workspace ONE Mobile Flows」が紹介された。いずれも、昨年の年次イベント「VMworld」で発表されたもので、「Workspace ONE」のアドオン機能だ。現在は、Technical Previewの段階にある。

「Workspace ONE Intelligence」は、アプリケーションやデバイスの利用パターンに関する詳細な情報を提供し、必要なアクションを自動化する。本田氏によると、ユーザーから「データを可視化したい」というニーズが寄せられており、同機能により、データのレポーティングと自動化を実現するという。

一方、「Workspace ONE Mobile Flows」は、モバイルデバイス向けのワークフローアプリだ。例えば、Salesforce.comと連携して、ワークフローの簡略化を可能にする。

以上のように多彩な機能を備える「Workspace ONE」だが、すべての機能を導入するのではなく、特定の機能から導入するケースが多いという。日本ではデバイス管理機能が特に人気があるそうだ。