NECと産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所(理研)は2月5日、AIの研究テーマ「未知な状況における意思決定」と「自律型AI間の協調」について、基盤技術開発から実用化まで一貫で、三者の一体連携で加速していくことに合意した。これに伴い、昨年12月22日に共同研究について覚書を締結している。
今回の連携では「NEC-産総研人工知能連携研究室」および「理研AIP-NEC連携センター」の活動において、研究開発に関する情報の共有、ソフトウェアの共同開発、設備などの研究リソースの相互利用により、応用ソリューションと要素技術の間のすり合わせの効率化、さらにより高いレベルでの整合性による活動効率化、研究成果最大化を目指す。
研究テーマは、ビッグデータ分析における過去データが不十分な「未知な状況における意思決定」、個別システムのスマート化の進展により求められる「自律型AI間の協調」となる。
未知な状況における意思決定に関しては、人間の意思決定の対象が複雑化する昨今では意思決定を高度に支援するAI技術が期待されているという。これには熟練者のノウハウを知識ベース化して活用する自動推論技術が有望となるが、未知の事象への対処には、複雑化した対象を網羅的に知識ベース化する必要があり、その膨大なケースデータを蓄積することの現実性から実現が困難だと指摘。
同連携では、複雑化した対象をシミュレーションした上で自動推論技術と融合することで、現実的な規模の知識ベースから妥当な推論を行う技術を開発する。この技術により、社会インフラのオペレーションにおいて、非熟練オペレーターでも熟練オペレーターと同等の意思決定が可能となり、経験不足によるオペレーションミスを飛躍的に削減できるという。
自律型AI間の協調については、社会インフラや交通手段、流通システムなどがAIにより自律的に制御されるようになると、自律制御システム間の挙動が競合し、社会システム全体が正しく機能しなくなる場面が想定されている。
同連携では、自律制御システム間で譲る、分担する、融通するなどのAI同士が自律的に協調を行う技術を研究。同技術により、自動運転車など自律型の機器が出現し、社会システムにこれらが組み込まれる際に、人間が制御するよりも安全・効率的に機能させることで、交通や物流から社会を一変させることが期待されているという。
なお、NEC-産総研人工知能連携研究室はシステム全体が最適に機能するための動作原理や機能仕様などの追及を分担し、理研AIP-NEC連携センターは事業優位性の確保に必要な要素技術の高性能化のための速度・規模・精度などの追及や、理論限界の解明などを分担する。