京都大学(京大)は、ボルネオ島での観察とDNA分析から、ボルネオオランウータンの劣位雄が子どもを残すことを明らかにしたと発表した。
同成果は、京都大学大学院理学研究科・人類進化論研究室の田島知之(教務補佐員)と、東邦大学理学部 講師の井上英治らによるもの。詳細は霊長類学の国際学術誌「PRIMATES」に掲載された。
オランウータンの優位雄は90キロを超える巨体と「フランジ」と呼ばれる顔のヒダを特徴として持ちいるが、その他の劣位雄にはフランジはなく、体格もメスと同程度しかありない。
この立場の弱い「アンフランジ雄」は一時的に体の成長を止めながら、交尾のチャンスをうかがっていると言われる。もし近在のフランジ雄が死んだりしていなくなると、アンフランジ雄がフランジを発達させて次の優位雄へと「変身」する。
今回、アンフランジ雄状態でも子を残しているのかどうか、糞からDNAを抽出して親子鑑定をして調べた。その結果、アンフランジ雄がわずかに子どもを残していること、それが初産の子であったことを明らかにした。
初産の子の父親になることは、子を残すチャンスの限られたアンフランジ雄にとっての繁殖戦術の結果である可能性がある。
今回の成果を受けて研究グループは、今後、まだ謎の多いアンフランジ雄の生態と、オランウータンの社会構造の解明に貢献することが期待されるとしている。