自然科学研究機構(NINS)は、平成16年4月の法人化により新たに発足した4つの大学共同利用機関法人の1つで、文部科学省の大学共同利用機関であった国立天文台、核融合科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所の5つの研究所が連携し、天文学、物質科学、エネルギー科学、生命科学その他の自然科学に関する研究の推進を目指している。

同機構は大学共同利用機関で、各大学では購入できないような機器、装置を導入し、全国の研究者に共同利用・共同研究の場を提供する中核拠点として機能している。メインで利用するのは大学教授だが、プロジェクトによっては、企業の研究者も利用する場合もあるという。

愛知県岡崎市には同機構の岡崎共通研究施設があり、5つの研究所のうち、基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所の3つがある。

  • 岡崎共通研究施設

岡崎共通研究施設では、5年一度、メールサーバ、Webサーバ、ファイル転送サーバ、ログサーバなどの各研究施設の共通基盤システムのリプレースがあり、一昨年から作業を開始した。

システム導入は総合評価方式の入札によって行われ、今回のシステムではネットワンシステムズの提案が採用された。対象機器はスイッチなどのネットワーク機器のほか、サーバ、ストレージなどだ。このシステムでは、仮想サーバ50台ほどを運用し、メールアドレスも1000個ほど発行しているという。

同機構では、一昨年3月から入札に向けた作業を開始。まずニーズを踏まえ、必要な仕様を共通化して抽出する仕様策定を開始した。その後、仕様に基づいて募集を行い、入札。一昨年12月からセットアップ作業および検証作業を開始した。そして、3月からの移行作業を経て、4月から本番運用が開始された。

以前のシステムでは、サーバ3台の上でVMwareを稼動させ、仮想サーバを50個程度運用。ストレージは大手ベンダーのものを利用していたが、とくに大きな問題はなかったという。 新システムにおけるストレージに対するニーズについて、自然科学研究機構 岡崎情報ネットワーク管理室 技術主任の内藤茂樹氏は、

「ストレージに関しては、I/Oのレスポンス性能、VMwareとの親和性、日々の運用の手間などを重視しました。また、こちらがほしい容量をどれだけ安く調達するかという視点もありました」と説明した。

  • 自然科学研究機構 岡崎情報ネットワーク管理室 技術主任の内藤茂樹氏

とくに重視したのは、日々の運用の部分だという。

「以前のシステムではFC(Fibre Channel)を使っており、RAIDの物理構成を意識する必要があるオペレーションが求められました。そのため、1つのストレージプールを構成し、必要量を取り出せ、QoS制御ができるというが改善ポイントでした」(内藤氏)

また、今後のVM数の拡大に備える必要性も感じていたという。

新システムのストレージとして採用したのは、論理実効容量66TB、サポートVM数が2,000 の「Tintri VMstore T850」だ。

  • 「Tintri VMstore T800 シリーズ」

提案したネットワンシステムズでは採用理由を、自然科学研究機構のニーズを考慮し、VMwareに特化したストレージで、簡単に使える点、ストレスなくアクセスできる点を考慮して決定したと説明する。

4月からの本番稼動以降、稼動するVM数は70に増えたが、運用は順調だという。自然科学研究機構 岡崎情報ネットワーク管理室の技術職員 澤昌孝氏は、とくに、運用面の効果が大きいと話す。

「VMにストレージを割り当てるのが非常に簡単で、VMwareとの連携により、vCenter上のGUIでCPUを割り当てるのと同様に、LUNを意識することなく、同じ画面でストレージを割り当てられるので、非常にオペレーションが楽になりました」(澤氏)

  • 自然科学研究機構 岡崎情報ネットワーク管理室の技術職員 澤昌孝氏

また、内藤氏はレスポンス面でも、現状、とくに不満はないという。

「最近はネットワークとして10GbEを利用していますが、ネットワークが早くなってくると、ストレージのレスポンスでストレスを感じることがあります。ネットワークが早くなると、それにあわせてストレージも早くないとだめだと思います」(内藤氏)

そして今後は、ティントリのクラウドサービスを利用してみたいと話す。

昨年9月にリリースされた「Tintri OS 4.4」には、新たなオプションとして「Tintriクラウドコネクター」(税別108万円~)が実装された。これにより、別途ゲートウェイを用意することなく、VMのバックアップ先として、Amazon Web Service(AWS)やIBM Cloud Object Storageが利用できる。

また、新たに追加された「Tintri Cloud Connector」を使用すれば、オンプレミスとAWSを統合し、ハイブリッドクラウドサービスを構築できる。

バブリッククラウドは、初期導入コスト安いが、自然科学機構のように5年間という長期利用の場合だとオンプレミスにコストメリットがある。ただ、内藤氏は、短期間利用の研究プロジェクトのようなケースでは、パブリッククラウドを利用したほうが良い場合があると指摘する。そのような場合は、オンプレミスとパブリッククラウドの連携が重要になってくる。

「ハイブリッドクラウドで、オンプミスのデータを簡単にパブリッククラウドで移行できるなど、シームレスに利用できるのできれば、より使い勝手がよくなると思います」(内藤氏)

世の中がハイブリッドクラウドにシフトしていく中で、ストレージを選ぶ指標として、パウリッククラウドとの連携も、今後、重要な指標になりそうだ。