ライナフは1月30日、5つの事業会社と提携し、東京都大田区の賃貸マンション「ジニア大森西」において、スマートロック「NinjaLock」を活用することで、自宅に不在時でも宅配や家事代行サービスを受けることができる「サービスが入ってくる家」プロジェクトを2月下旬より開始すると発表した。
ライナフ 代表取締役の滝沢潔氏がプロジェクトについて説明を行った。同氏は、2010年以降、標準世帯と呼ばれていた夫婦と子供から成る世帯が減少している一方、単身世帯が増えていることから、「家も変わっていく必要がある」と述べた。
滝沢氏は、将来の「家」を考える場合、同社では「土間」をキーワードに据え、さらに「土間」を新しくしたいと説明した。「土間とは戸外と屋内の中間的な場所で、部外者も入ることができる。現代はセキュリティやスペースの問題から、土間がなくなっている。われわれは時代に即した土間を作っていきたい」
土間を新しくするコンセプトが「サービスが入ってくる家」となる。このコンセプトを具現化する「ジニア大森西」においては、共有エントランス部にライナフのオートエントランス解錠システム、36室すべての居室にライナフのスマートロック「NinjaLock」、セーフィーのクラウド防犯カメラを設置する。
スマートロックの玄関扉と錠前付き室内ドアの土間がサービスの受け渡しゾーンになる。錠前付き室内ドアは玄関と同じ鍵で開けることができる。
これらのIoT製品によって、入退室の管理、遠隔からの室内状況の確認、「誰がいつどこで何をした」という履歴の取得が可能になる。
3つのIoT製品を活用することで、セキュアな状況で外部の人を家の中に招き入れることが可能になっており、「IoTによって、安心と安全を確保し、セキュリティを高めることで、土間を実現している」と、滝沢氏は語った。
サービスの運用の流れはこうだ。サービスを提供する事業者の担当者がライナフの24時間コールセンターに電話で施錠を依頼、本人確認を行った後にインターネット経由で鍵の開閉操作を行う。室内に入ったサービスの担当者は「土間」に荷物を置いたり、室内で家事を行ったりする。ユーザーは、「NinjaLock」のスマートフォンアプリから入退室の履歴やカメラの録画を確認することができる。
こうしたサービスの場合、スマホアプリを利用するケースが多いが、アプリを使わずに始めるという。その理由について、滝沢氏は「スマートフォンアプリには、セキュリティの問題に加え、スタッフの習熟度に差があるといった課題がある」と説明した。
発表時点では、宅配サービスとして、パルシステムとリネットが、家事代行サービスとして、honestbeeとタスカジとベアーズを利用できる。
発表会には、プロジェクトに参画する企業から、honestbee Japan General Manager 宮内秀明氏、タスカジ 代表取締役 和田幸子氏、生活協同組合パルシステム東京 事業運営部 部長 小林秀信氏、セーフィー CMO 小室秀明氏、ベアーズ マーケティング部 部長 後藤晃氏、ホワイトプラス 代表取締役 井下孝之氏が参加した。
パルシステムの小林氏は、プロジェクト参画によって期待する効果として、「ユーザーが不在の場合にできないマンションにおける再配達の削減」「不在時の対応による配送担当者の残業削減」「組合員の不満軽減」を挙げた。
また、ベアーズの後藤氏は、「顧客が不在時に室内に入る場合、サービス担当者も鍵を預かることにプレッシャーを感じており、鍵がない状態で室内に入ることができるのは便利。また、サービス提供後にレポートを提出することにはなっているが、カメラの設置によって、『自分がいない間に何かされたのではないか』など、顧客のモヤモヤも解消できると思う。宅配サービスや家事代行サービスを利用するにあたって、1社ずつ依頼するとなると手間がかかるが、1つのプラットフォームで複数のサービスを依頼できるのはうれしい」と語った。
今後の展開としては、サービスゾーンに小型冷蔵庫を設置することで食事や生鮮食品の宅配を可能にしたり、ハンガーラックを設置することでハンガーにかかった状態で衣服を受け渡したりといったことも視野に入れているという。
また、「NinjaLock」は既存の鍵に被せて利用することができるため、中古のマンションにも導入することができる。そのため、「今回は新築のマンションにサービスを導入するが、中古のマンションに導入することも可能。ポーチが広いという点では、戸建てでもサービスを利用してもらえるのではないかと考えている」と、滝沢氏は述べた。