京都大学(京大)は1月26日、植物の生殖細胞をつくるための鍵となる遺伝子を発見したと発表した。同成果は、植物の生殖細胞の形成メカニズムを明らかにするものだという。
同成果は、山岡尚平京都大学生命科学研究科 助教、河内孝之 教授らの研究グループと、基礎生物学研究所(重信秀治 特任准教授チーム)らの研究グループの共同によるもの。詳細は英国の学術誌「Current Biology」オンライン版に掲載された。
花を咲かせる植物は、受粉することで種子をつくり、子孫を残す。これは、花粉の中で作られる「精細胞」が、雌しべの中の卵と受精することで起こる。しかし、精細胞をつくる分子メカニズムは、多くの部分が未解明のままになっている。
ゼニゴケは、卵と精子を特有の生殖器(造卵器と造精器)の中につくって受精を行う。今回の研究では、BONOBOと名付けた転写因子が、ゼニゴケにおいて生殖器をつくる過程をコントロールしていることを明らかにした。
BONOBOは、ほぼすべての陸上植物にあって遺伝子ファミリーを構成していた。さらにシロイヌナズナのBONOBO相同遺伝子の解析を進めたところ、花粉の精細胞をつくるのに必要であることを突き止めた。
これらのことから、BONOBOファミリーは陸上植物の生殖細胞をつくるために必要不可欠であることが判明した。
今回の成果を受けて研究グループは、一見まったく違うようにみえる花粉の精細胞とコケ植物の生殖器は、類似の分子メカニズムを使ってつくられており、BONOBOは、約4億5000万年前に陸上植物が誕生したときから受け継がれてきた、陸上植物の生殖細胞形成の鍵となる遺伝子だと考えられるとしている。