ブースの一角に「POLICE」と記載されたベストにスマートグラスを着用したマネキンが展示されていたサン電子のブースも、数多くの来場者が詰め掛けた第4回ウェアラブルEXPO会場内で大いに賑わっていた。“業務スタイルが変わる”とのコンセプトに引き寄せられ、筆者も早速その実力を体感してみた。
サン電子が出展した「AceReal One」の最大の特徴は、メインとなるセンターカメラの他にステレオカメラを搭載することによって、「SLAM ( simultaneous localization and mapping)技術」に基づいた空間認知機能を実現していることにある。地磁気や加速度、傾き等を検知できるIMU(Inertial Measurement Unit)を筆頭にマイクやスピーカーが搭載されたオールインワンな性能を有している。肝心のディスプレイは、720×900pxの縦型シースルータイプ(3D表示はトップボトム方式)を採用しており、装着者の視界を遮らず快適性を損なわない。
そして、スマートグラスから伸びるケーブルの先には、バッテリーやCPUが搭載されたコントローラが付いている。やや大きめな印象を受けたが、これは前面に感圧式液晶ディスプレイ、背面には物理ボタンの操作性を考えてのことだろう。microUSBポートもふたつ設けられており、モバイルバッテリーを接続して長時間の利活用を行うことも可能。専用ホルダーによって、コントローラとモバイルバッテリー双方をしっかりと保持することも可能となっている。
ブースでは、エンジン整備作業を円滑に行うために「AceReal One」を利用したデモンストレーションを体験することができた。作業手順の確認はもちろん、エンジンのどの部分を触れば良いのか、それに必要な工具はどれなのかをARで情報提供を受けながら作業が進められる。仮に両手が塞がってしまっていても、「ARで表示されたカーソルを指定の場所で3秒間保持する」等の操作方法によってコントローラを触る必要なく業務を続けることができる工夫が成されていた。慣れていなかったせいかややカーソルコントロールに戸惑いはしたものの、思っていた以上に鮮明な映像として現実世界に投影されていたことに驚かされた。
デモンストレーションで体験したような作業現場での利活用イメージの他にも、IP54に準拠した防塵・防滴性能を活かしてフィールドエンジニアへの遠隔支援や建設現場の業務改善、医療分野や警備・警察分野での利活用を期待しているという。また、ARを活かしスポーツやアトラクションといった領域においても、新たな付加価値をもたらしていければと解説員の方。そういった想いに応えられるよう、サン電子はアプリケーション開発用のキット(AceReal SDK)を提供している。
空間認識型のARコンテンツはもちろん、音声認識やボイス・ビデオチャット等の機能を盛り込んだオリジナルのアプリ開発が行える。自社製品やサービスと組み合わせるも良し、例えば観光地でランドマークを認識させて案内を表示する、仏像を見やるだけでその名称や歴史的背景を見せてくれるといったコンテンツを制作することも可能だ。他にはない空間認識型ARを使える優位性を活かし、「AceReal One」で様々な業界に新たな価値が提供されていくことに期待したい。