米IC Insightsは1月18日(米国時間)、2017年の半導体産業のM&Aについて、2015年と2016年と続いた歴史的な大型案件の数が減少し、買収の総金額も大きく下落したが、それでも2010年代前半の年間M&A総額に比べれば2倍程度の規模を維持した状態であったことを明らかにした。
2017年は、半導体企業、事業部門、製品ライン、および関連資産について20を超える買収契約が締結されたが、その総額は277億ドルとなったという。2015年は、史上最高額の1073億ドルを記録したほか、2016年も998億ドルであったことを踏まえると、大幅下落と言える。ただし、 2010年から2015年にかけての年平均M&A額は約126億ドルであったことを踏まえると、過去2年間が飛びぬけていることが分かる。
2010年から2017年における世界半導体産業の年間M&A総額の推移(単位:10億ドル)。金額は、買収手続き完了時点ではなく、買収契約締結時点で集計されたもの (出所:IC Insights)
2017年と過去2年間の違いの1つは、発表された大型取引がはるかに少ないということである。2017年に10億ドルを超えたM&A案件は、東芝のメモリ事業売却の180億ドルとMarvellによるCavium買収の60億ドルの2件のみで、この2つの案件だけで、2017年のM&A総額の87%を占めている(2015年の10億ドル超えは10件、2016年は7件)。
この2つの案件のおかげで、半導体M&A契約額の1件当たりの平均額は13億ドルに押し上がったが、この2つの案件を除くと、2017年の平均契約額は1.85億ドルとなる。 なお、2015~2016年は、スマートフォン、PC、タブレットなど、低成長が目立ってきた半導体の主要な最終用途向けから脱して、IoTやウエアラブル・システム、ADAS、そして近い将来実現するであろう自動運転車などの高いインテリジェントが求められる組込機器向けなどへと転出することを目指したM&Aが多かった。しかし、2017年は、これらの買収手続きに手間取ったり、欧州、米国、そして中国の当局による独占禁止審査などが長引いていることも、大規模な半導体買収のペースを遅らせた一因となったとIC Insightsでは見ている。
例えば、2016年に発表されたQualcommのNXP Semiconductors買収は、いまだに中国当局による独占禁止法の審査が完了していない。2018年は、BroadcomによるQualcomm買収が実現すれば、それだけでM&Aの年間契約額が史上最高になる見通しだが、Qualcommは、提示された買収額は、自社の市場価値を過小評価しているとして買収に応じていない姿勢を見せており、今後の動きが不透明となっている。