半導体市場調査会社である仏Yole Développementは1月22日(仏時間)、「RF GaN Market: Applications, Players, Technology, and Substrates 2018-2023」と題するレポートを発行したが、その中で、RF GaN市場は2017年の3億8000万ドルであったものが、今後、5Gネットワークの本格的な普及により、2017~2023年の年平均成長率(CAGR)22.9%で成長を遂げ、2023年末には現在の3.4倍の規模にまで拡大するとの予測を明らかにした。

  • 2017年および2023年におけるRF GaNデバイス市場の応用分野

    図1 2017年および2023年におけるRF GaNデバイス市場の応用分野。電気通信向け(緑色)、軍事/防衛向け(橙色)、その他の用途(衛星通信、ケーブルテレビなど)(黄色)で色分けされている。CAGR22.9%で成長し、市場規模は2017年の3.8億ドルから2023年には13億ドル拡大する (出所:Yole Développement)

現在、RF GaNは、RF業界では主流になりつつあるが、IDM企業である住友電工、Qorvo、Creeがマーケットシェアの大半をにぎっている。ただし、今後は製造技術の成熟ならびに生産能力の増強が求められることから、ファウンドリがシェアを伸ばしてくる見込みだという)。

  • RF GaNビジネスモデルの変遷予想

    図2 RF GaNビジネスモデルの変遷予想。2017年時点では、プロセスの制御が難しく製造歩留まりが低いためIDMでの製造が主流だが、2023年には、技術が成熟し生産能力が増大することからデザインハウスとファウンドリが台頭してくる見通しとなっている (出所:Yole Développement)

特に5Gの商用化に向けて加速が始まる2018年から、通信市場がGaNデバイスにとって大きなチャンスとなるとYoleでは見ている。GaNデバイスは、既存のシリコンLDMOSおよびGaAsと比較して、次世代向け高周波通信ネットワークにおいて電力対効率の面で有利であるためである。GaN HEMTは、将来のマクロ基地局における電力増幅器のの候補技術であり、Yoleでは、サブ6GHzのマクロネットワークセルの実装で、活用されると予測している。

  • 2015~2025年の通信基地局におけるGaAsとGaNの棲み分け

    図3 2015~2025年の通信基地局におけるGaAsとGaNの棲み分け。用途(左端)、要求項目(中央)と最適な基板材料(右端) (出所:Yole Développement)

また、防衛市場は長年にわたるGaN開発の大きな原動力となってきた市場であり、米国国防総省では、高出力が可能なGaNデバイスを、検出範囲と分解能を向上させてくれるとして次世代の空中レーダと地上レーダに実装している。そのため、防衛用途でGaNデバイスが普及するにつれて、非軍用部品の開発に影響を与える可能性もあるという。中国FGC Investment Fundによる独Aixtronの米国子会社の買収や独Infineonによる米Wolfspeedの買収計画のとん挫にみられるように、企業が軍事用途のGaN製品を製造している企業の買収を仕掛けた場合、米国政府はそれを阻止する可能性が今後とも高いためである。

なお、GaNトランジスタの価格は現状、比較的高い部類にあるが、近い将来、市場を拡大し、価格を下げためには、より多くの企業が同市場に参入する必要があるとYoleは見ている。また、パッケージの工夫も価格低下につながることから、新タイプのパッケージ材料やダイの取り付け方法についての検討も必要としている。